大阪高等裁判所 昭和62年(行ケ)1号 判決 1988年11月22日
原告
福岡建男
外九六名
右訴訟代理人弁護士
宮崎定邦
外七名
右訴訟復代理人弁護士
川西譲
外三六名
被告
兵庫県選挙管理委員会
右代表者委員長
西田清一
右訴訟代理人弁護士
奥村孝
右訴訟復代理人弁護士
中原和之
主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
ただし、昭和六二年四月一二日に行われた兵庫県議会議員選挙の別紙選挙区目録記載の選挙区における選挙は違法である。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一 当事者双方の求めた裁判
(別紙当事者目録記載番号1ないし27の原告らの請求の趣旨)
1 昭和六二年四月一二日に行われた兵庫県議会議員選挙(以下、「本件選挙」という。)の効力に関する原告らの異議申出につき、被告が同年五月一二日にした異議申出却下の決定(以下「本件決定」という。)を取り消す。
2 本件選挙の神戸市西区選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(別紙当事者目録記載番号28ないし38の原告らの請求の趣旨)
1 本件選挙の効力に関する原告らの異議申出につき、被告がした本件決定を取り消す。
2 本件選挙の神戸市須磨区選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(別紙当事者目録記載番号39ないし50の原告らの請求の趣旨)
1 本件選挙の効力に関する原告らの異議申出につき、被告がした本件決定を取り消す。
2 本件選挙の神戸市北区選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(別紙当事者目録記載番号51ないし64の原告らの請求の趣旨)
1 本件選挙の効力に関する原告らの異議申出につき、被告がした本件決定を取り消す。
2 本件選挙の宝塚市選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(別紙当事者目録記載番号65ないし87の原告らの請求の趣旨)
1 本件選挙の効力に関する原告らの異議申出につき、被告がした本件決定を取り消す。
2 本件選挙の高砂市選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(別紙当事者目録記載番号88ないし97の原告らの請求の趣旨)
1 本件選挙の効力に関する原告らの異議申出につき、被告がした本件決定を取り消す。
2 本件選挙の伊丹市選挙区における選挙を無効とする。
3 訴訟費用は被告の負担とする。(請求の趣旨に対する被告の答弁)
一 本案前の答弁
1 原告らの訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告らの負担する。
二 本案の答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者双方の主張
一 請求原因
1 当事者
原告らは、いずれも本件選挙の選挙無効を求める各選挙区における選挙人であり、被告は、本件選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である。
2 原告らの異議申出に対する被告の決定
原告らは、昭和六二年四月二〇日、被告に対し、本件選挙が各選挙区の人口に比例せず、憲法、公職選挙法(以下、「公選法」という。)に違反する「兵庫県議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例」(昭和四一年兵庫県条例第六〇号、以下、「本件定数条例」という。)に基づき施行されたもので、無効であるとして異議申出をしたが、被告は、同年五月一二日、本件決定をし、同月一三日、原告らに決定書を交付した。
本件決定の理由は、これを要するに、議員定数の配分の瑕疵を理由とする異議申出については、たとえ被告が選挙を無効として再選挙を実施したとしても、瑕疵を是正しえないことは明白であり、したがって、本件異議申出は不適法であり、却下を免れないというのである。
3 本件決定の違法性と本件選挙の無効
(一) 憲法一四条一項は、国民は、すべて法の下に平等であると規定するが、選挙権の行使においても平等が保障されなければならないことはいうまでもない。そして、右選挙権の平等に関する憲法上の原則は、単に、選挙人資格の平等にとどまらず、各選挙人の投票価値の平等をも含むものであるとともに、ひとり国会議員の選挙のみならず、地方公共団体の議会の議員の選挙についても要請されるところである。
(二) 右投票価値の平等を図るためには、選挙区制をとる選挙にあっては、各選挙区間において選挙人の投票価値に不平等が生じないように配分される定数の均衡が要請され、この様な各選挙区間の定数の均衡の要請を実現するには、議員定数の配分が人口に比例して行われることが必要である。この様な見地から、都道府県の議員の選挙について、公選法一五条七項は、各選挙区について選挙すべき議員の数は、人口(公選法施行令一四四条により、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口とされる。)に比例して条例で定めなければならないとしている。
(三) 厳密にいえば投票価値の平等とは、どの選挙区の選挙人の投票価値も同一であることを意味するといわなければならないが、議員定数を幾つかの選挙区に分けて選挙を行わせる制度をとる場合には、各選挙区の議員定数が完全に人口に比例することは、技術的に困難であり、また、現行法制上行政区域を選挙区としていることからも、ある程度の較差が生じることはやむをえないと考えられるが、選挙権が、国民主権、地方自治に直結した権利であり、各選挙区への定数配分については、人口比例原則が最も重要かつ基本的な基準とされ、地方議会議員については、公選法において人口比例原則が法定されていることを併せ考えると、各選挙区の議員一人当りの人口は、一対一に可能な限り接近するように定数配分が行われなければならない。
公選法一五条七項は、その但し書において、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して議員定数を定めることができるとし、場合によっては一対一の人口比例原則を緩和できることを規定している。しかし、一般に、但し書は、本文の定める原則に対する例外を定めるものであるから、原則を緩和することになるのは当然であるが、同時に、原則を著しく離れることはできないという本質的制約があること、諸般の要素に基づく投票価値において多少の不平等はやむをえないとして忍ぶとしても、自己が一票しか持っていないのに、他人は、その倍の二票を持つのと同じ結果になるようなことは我慢できないという素朴な気持ちないし健全な国民感情を勘案すると、議員定数配分にあたって、特別の事情があるとき、地域間の均衡を考慮して、一対一の人口比例原則をある程度緩和することは許されるが、一対二の較差を超えることは、違憲、違法であり、許されないものというべきである。
(四) 本件選挙における投票価値の不平等
さきに述べたとおり、公選法一五条七項によれば、各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議員の数は、人口比例によって算出されることとされているが、その具体的な方法は、直近の国勢調査の結果公表された人口に基づき、兵庫県全体の議員一人当りの人口数を求め、各選挙区の人口を議員一人当りの人口で除して得た数(配分基数)によるとされている。本件選挙の選挙区、国勢調査人口、定数、議員一人当りの人口、議員一人当りの人口についての佐用郡選挙区を一とした各選挙区の較差は、別表三のとおりであり、右議員定数配分の実態をみると、本件選挙は、以下に述べるとおり、明らかに違憲、違法なものであるといわざるをえない。
(1) 本件選挙における議員定数の配分によれば、人口の多い選挙区のほうが、人口の少ない選挙区よりも議員定数が少ないという逆転現象が、次のとおり、四六選挙区中一二選挙区において、二七通り存在する。
① 二人区対三人区
宝塚市対兵庫区、灘区、長田区、東灘区
伊丹市対兵庫区、灘区、長田区
須磨区対兵庫区、灘区、長田区
北区対兵庫区、灘区、長田区
川西市・川辺郡対兵庫区、灘区、長田区
② 一人区対二人区
西区対津名郡、氷上郡
高砂市対津名郡、氷上郡
芦屋市対津名郡、氷上郡
三木市・美嚢郡対津名郡、氷上郡
揖保郡対津名郡
赤穂市・赤穂郡対津名郡
神崎郡対津名郡
こうした逆転現象は、選挙権の平等原則に全く相反するものであり、それが四六選挙区中一二選挙区において、二七通りも存在するという事態は、それだけで本件選挙における議員定数配分が違憲、違法なものであることを意味するといわざるをえない。
(2) 本件選挙における議員一人当りの各選挙区の人口数の最大較差は、佐用郡を一とした場合の神戸市西区の4.52で、較差三倍以上の選挙区が、四六選挙区中一一選挙区、議員定数九一名中二〇名、較差二倍以上の選挙区は二五選挙区、議員数六四名に達している。
(五) このような違憲、違法な兵庫県議会議員選挙の定数配分は、既に、昭和五〇年施行の選挙において、最大較差3.95倍、逆転現象四通り(昭和四五年国勢調査人口に基づく。)、昭和五四年施行の選挙において、最大較差3.65倍、逆転現象一二通り(昭和五〇年国勢調査人口に基づく。)、昭和五八年施行の選挙において、最大較差3.69倍、逆転現象二一通り(昭和五五年国勢調査人口に基づく。)と、選挙権の平等原則に反する状態が、少なくとも一〇年を超えて継続し、その間、選挙権における投票価値の平等が憲法上の要請であることを判示した最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決(民集三〇巻三号二二三頁)、地方議会議員選挙においても選挙権の投票価値の平等が要請されることを判示した最高裁昭和五九年五月一七日第一小法廷判決(民集三八巻七号七二一頁)、同六二年二月一七日第三小法廷判決(判例時報一二四三号一〇頁)があって、兵庫県議会もこのことは十分に承知していたにもかかわらず、同議会は、ごく部分的な弥縫策的是正を行ってきたにすぎない。
とりわけ、本件選挙に際しては、本件定数条例の改正を求めて、昭和六一年八月一三日の市民団体(憲法改悪阻止兵庫県各界連絡会議)の要望書提出をはじめ、県民の度重なる要望書提出、請願にもかかわらず、兵庫県議会は、なんらの是正措置をも講じなかった。
4 以上のとおり、本件選挙は、多数の著しい逆転現象と投票価値の大きな較差の存在を許した本件定数条例の下に行われたもので、公選法一五条七項に違反し、全体として違法、無効のものである。
よって、公選法二〇三条に基づき、違法な本件決定の取消しを求めるとともに、原告らの選挙区である別紙選挙区目録記載の各選挙区における本件選挙を無効とする旨の判決を求める。
二 被告の本案前の答弁
1 原告らは、定数配分規定である本件定数条例に規定する議員定数の配分は、憲法及び公選法に違反しており、このような定数配分規定に基づいて施行された別紙選挙区目録記載の各選挙区における本件選挙は、無効であるというのみであって、当該選挙区にかかる選挙の管理執行上の瑕疵を無効事由と主張するものではない。このような定数配分規定そのものの違憲、違法を無効事由とする訴訟については、仮に配分規定それ自体に瑕疵があったとしても、選挙管理委員会の権能をもってしては、是正不可能なことがらであり、その限りで選挙管理委員会が被告適格をもたないことは、明らかである。したがって、その余の点について論ずるまでもなく、この点において原告らの訴えは、不適法であり、却下を免れない。
2 そもそも、選挙の効力に関する訴訟は、選挙の管理執行機関の公選法規に適合しない行為を是正し、選挙の執行の公正の維持を目的とする訴訟であり、典型的な民衆訴訟の一つである。いうまでもなく、民衆訴訟は、法律上の争訟に該当せず、法律により特に裁判所の権限として定められた訴訟である。したがって、公選法上の選挙の効力に関する訴訟は、公選法二〇三条以下の規定に従い、同法所定の範囲内においてのみ訴えを提起することができるのであって、右範囲外の事項に関しては、訴訟で争うことが禁じられているというべきである。
このように、公選法の予定する選挙訴訟は、選挙の管理執行上瑕疵があった場合に、これを無効として、早期に改めて適法な選挙を行うことを義務づけるところにその本旨があるのであって、選挙管理委員会がその違法を是正し、適法な選挙を行い得るものに限られる。
したがって、議員定数配分規定自体の違憲、違法を主張して選挙の効力を争う本件訴訟のように、たとえ選挙を無効としたとしても、公選法一一〇条三項及び三四条一項の規定する期間内(再選挙を実施すべき事由が生じた日から五〇日以内)の再選挙の実施が困難であったり、再選挙を実施するとしても、選挙管理委員会において、その瑕疵を是正することが不可能なことが明らかな訴えについては、民衆訴訟としては許容されている事項以外の事項を目的とした訴えとして却下を免れない。
3 地方自治法九〇条四項によれば、議員定数の変更は、一般選挙の場合でなければできないとされ、論理上、選挙区別定数の変更も、またこれと同様に解されている。もし、原告らの主張が容認されるとすると、容認された選挙区の議員数を増加せざるを得ず、これは全体の定数増加となり、右地方自治法九〇条四項に抵触し、また、全体の定数を増加せずに当該選挙区の議員数を増加するには、他の選挙区の議員数を削減せざるを得ないが、既に有効として確定した他の選挙区の議員の地位を当該選挙区のために一方的に剥奪することは、法理上許されないところである。
結局、原告らの本訴請求は、議員定数を増加するか、定数の再配分を行わない限り、その目的を達し得ないものであり、しかも、このような是正は、前述したように、次の一般選挙の場合に限り認められているにすぎないから、原告らの選挙無効請求が容認されると仮定しても、これに適合する再選挙は不可能といわざるを得ず、このような是正不可能なことを目的とする訴えは、もともと訴えの利益を欠く不適法なものとして却下を免れない。
三 請求原因に対する被告の認否及び主張
1 請求原因に対する被告の認否
(一) 請求原因1及び2の事実は認める。
(二) 請求原因3のうち、本件選挙時における選挙区間の最大較差が4.52であり、逆転現象が二七通り存在する事実及び別表三記載の数値は認めるが、その余は争う。
2 請求原因に対する被告の主張
(一) 県議会の裁量権限
憲法一五条、九二条及び九三条によれば、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定めることとされ、その議決機関である議会の議員の選挙についても、当該地方公共団体の構成員である住民が直接選挙によって議員を選出する、と定める以外に特段の制約はない。これら規定の趣旨は、地方自治が民主主義の根幹をなすものであり、国の関与をできるだけ排除し、地方の行政は、その構成員である住民自らの手で処理させることを基本に、住民から選ばれた首長と議会を中心にして、自主的に運営されるべきであるとの理念を示したものである。
首長と議会議員とを、ともに住民の直接選挙によるとする憲法九三条二項の規定は、首長に関しては、いわゆる大統領制を採用し、首長が直接住民の意思を汲み取って地方行政を行う途を開いたものであり、同時にこれに対応する議員の選出についても、同じ直接選挙の範囲内において、首長と対等に対応するにふさわしい選出制度を採用すべきことを要請していると解すべく、首長の直接選挙に対等に対応するにふさわしい議員選挙制度としては、地域的にまとまりのある選挙区を設定し、その地域代表的性格も保有せしめる制度とするのが最も好ましい方法である。これは、地方自治の本旨にも合致した公正かつ効果的な代表者選出制度であり、憲法は、地方公共団体の議員の選挙制度に関し、人口比例の原則を絶対とせず、人口比例によりつつも、ある程度これに反する地域代表的性格を加味する選挙制度の採用も許容しているものといわなければならない。
したがって、現行法制は、右憲法の精神に則り、法律で一定の基準を設定するにとどまり、地方公共団体の議会は、この範囲内において、自由に定数、選挙区及び選挙区別定数を決定する裁量権を与えられているのである。
すなわち、代表民主制の下における地方議会議員の選挙制度は、選挙された代表者を通じて、住民の利害や意見を公正かつ効果的に地方行政に反映させることを目標とするとともに、政治における安定性の要請をも考慮しながら、それぞれの地域の事情に即して具体的に決定されるべきものであり、そこに論理的に要請される一定不変の形態があるわけではなく、単なる数字の操作のみでは解決できない高度の政治的、技術的要素を含むものであり、それぞれの地方公共団体における多種多様で複雑微妙な政策的、技術的考慮の下に、自主的に決定されるべきものである。
それ故、前記憲法の趣旨に則り制定された地方自治法、公選法に基づき地方公共団体が制定している議員定数条例は、地方公共団体の議会が、住民全体の意思を十分に県政に反映しうるような、公正かつ効果的な代表制度を確立すべく、その裁量権を行使してこれを決定したものであるから、右決定は、合理性、合法性の推定を受けるものであり、したがって、議員定数配分規定の適否は、それが極端に不平等である場合は格別、それ以外は、立法政策の問題にとどまり、違憲、違法の問題の生じる余地はない。
(二) 兵庫県議会議員の定数配分
(1) 都道府県議会議員の定数配分に関しては、公正かつ効果的な代表制度確立のため、地域性を加味すべきであるとの憲法の要請に基づき、地方自治法九〇条において、議員定数の上限が、公選法一五条及び二七一条において議員を選出するについての選挙区の決め方、及び、各選挙区に対する議員定数の配分方法が、それぞれ定められ、また、これらの法律の規定をうけて、各地方議会において、人口、自然的条件、行政区画及び財政状況等を総合的に勘案のうえ、条例で議員総定数及び選挙区等が定められている。
(2) 議員の総定数
地方自治法九〇条一項において、議員総定数の上限は、直近の国勢調査人口に基づき算出される旨、同条三項において、その上限を条例で特に減少することができる旨が、それぞれ定められている。
兵庫県の場合、本件選挙に直近の国勢調査(昭和六〇年一〇月)における人口は、五二七万八〇五〇人であることから、議員総定数の上限は一〇七人となるが、行財政改革を進め、議会の合理的、効率的な運営を図るため、県議会は、特にこの定数を減少するとの決定をし、本件定数条例において、議員の総定数を九一人とした、県議会に委ねられた合理的な裁量権行使の結果というべきである。
(3) 選挙区の決定方法
公選法によれば、県議会議員の選挙区は、郡市の区域によることとされている(同法一五条一項)。これは、県議会議員に、郡市という歴史的に形成された地域的まとまりのある地域の代表者的性格を持たせることを意図したものであり、明治一一年に府県会の制度が創設された当初から引き継がれてきた理念である。そして、郡又は市の区域の人口が、当該都道府県の人口を、当該都道府県の議会の議員総定数で除した数(以下「議員一人当りの人口」という。)の半数に達しない場合には、条例で隣接する郡市と合わせて選挙区を設けなければならないが(強制合区規定、同条二項)、当該選挙区の人口が議員一人当りの人口の半数以上ではあるが、なお議員一人当りの人口に達しない郡市については、独立した選挙区とするが、条例で隣接する他の郡市と合わせて一つの選挙区とするかは、当該都道府県議会の裁量に委ねられている(任意合区規定、同条三項)。右合区選挙区を設けるにあたって、どの郡市をもって合区選挙区とするかは、議会が、行政区画、衆議院議員の選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して自主的に決めることとされている(同条六項)。
なお、強制合区の対象となる選挙区であっても、昭和四一年一月一日現在において設置されている選挙区については、当分の間、強制合区の規定にもかかわらず、条例で当該区域をそのまま選挙区とすることができる(以下、「特例選挙区」という。)旨の例外規定(同法二七一条二項)がある。右例外規定は、日本経済の高度成長下に生じた都市部への急激な人口集中、農山漁村の過疎化の現象を、そのまま定数配分に反映させることが、過疎地域の活力のいっそうの低下を招いたり、一貫性、継続性のある施策を安定的に遂行する妨げになることを考慮し、また、都市部、農村部を問わず、それぞれの区域の住民の声を十分に反映しうる効果的な代表制の確立を目的として設けられたものである。
兵庫県の現行選挙区数は、四六であり、原則として郡市の区域によっている。なお、川辺郡、美嚢郡及び赤穂郡については、当該郡市の一部の町村が合併して市(川辺郡は川西市、美嚢郡は三木市、赤穂郡は赤穂市)となった結果、一郡一町となったため、同一郡に属していたこれらの市と町とで合併選挙区を形成している。また、城崎郡日高町については、城崎郡各町との関係で、飛地類似の位置関係にあること等から、城崎郡から分離して隣接する出石郡と合併選挙区を形成している。
また、兵庫県において、本件選挙の当時、強制合区の対象となる選挙区であるが、公選法二七一条二項を適用して特例選挙区とされているのは、佐用郡と城崎郡(日高町を除く。)の二選挙区である。
(4) 各選挙区における議員定数
公選法によれば、各選挙区において選挙すべき議員の定数は、人口比例を原則とするが、特別の事情があるときは、地域間の均衡を考慮して、人口以外の諸要素を総合的に勘案して定めることができるとされている(同法一五条七項)。
右規定の趣旨は、近年の激しい人口異動に伴い、都市部で人口が急増する一方、郡部の人口は減少の一途をたどり、住民の数と地方公共団体の行政需要が必ずしも対応しない状況が顕在化してきたこと、すなわち、各地域の社会経済事情に著しい懸隔が生じ、このため、各地域の当該地方公共団体全体の発展のうえで占める重要さの程度や、各地域の行政上の施策を必要とする程度が、必ずしもその現在の人口と比例しなくなっていること、及び、市町村を包括する広域の地方公共団体としての都道府県の役割が、市町村行政の補完と広域行政の推進にあることから、その公正、円滑な運営を期するため、各選挙区に対する定数を機械的に人口に比例して行うのではなく、人口比例原則に特例を設け、それぞれの地域の特殊性に応じて地域の代表を確保し、均衡のとれた配分を議会の裁量により可能ならしめようとするものである。
同項本文に定める人口比例の原則は、確かに重要であるが、投票価値の平等といっても、議員定数を人口に比例させることが唯一絶対の基準ではなく、むしろ、投票価値の平等は、地方議会が、選挙制度、代表民主制の原理からみて、正当に考慮することのできる他の政策目的との関連において正当に実現されるべきものであり、定数配分に当たって、形式的に人口のみを基準としたのでは、かえって、公正かつ効果的な代表という観点からは不相当となる場合に、それぞれの地域の具体的な特殊事情を考慮して、地域間の均衡を図ることは、投票価値の平等に反するものではないというべきである。
本件選挙における兵庫県の各選挙区ごとの議員定数は、別表三記載のとおりである。
(三) 定数条例の改正経過
(1) 定数条例の制定(昭和四一年)
昭和四一年一二月二八日に、それまで施行されていた「兵庫県議会議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例」(昭和三七年兵庫県条例第五二号)が廃止され、新たに本件定数条例が制定された。議員総定数は、地方自治法によれば、上限が九三人のところ、これを九〇人とした。
(2) 昭和四九年の定数条例改正
昭和四五年の国勢調査の結果、地方自治法による兵庫県の議員総定数の上限は、九八人となったが、九〇人のまま据え置かれたほか、次の改正が行われた。
神戸市北区が神戸市兵庫区から分離独立したことに伴い、神戸市兵庫区選挙区を、神戸市兵庫区と神戸市北区の二選挙区に分区した。また、定数については、従前の神戸市兵庫区選挙区の五人を、分区後の神戸市兵庫区選挙区に三人、神戸市北区選挙区に二人、それぞれ配分した。
飾磨郡選挙区について、公選法二七一条二項の規定を適用し、特例選挙区とした。
人口増加の著しい神戸市垂水区選挙区の定数を一人増員し、人口が減少した神戸市生田区選挙区の定数を一人減少した。
神戸市葦合区、氷上郡及び津名郡の各選挙区に対し、公選法一五条七項但し書の「特別の事情があるときは、人口を基準とししつも地域間の均衡を考慮して議員定数を定めることができる。」の規定を適用した。
(3) 昭和五三年の定数条例改正
昭和五〇年の国勢調査の結果、地方自治法による議員定数の上限は、一〇三人となったが、川西市及び川辺郡選挙区で一人増員したのみで、兵庫県の議員総定数は、九一人にとどまった。
その外、飾磨郡及び佐用郡選挙区に対し、公選法二七一条二項の規定を適用し、神戸市灘区、神戸市葺合区、神戸市長田区、氷上郡及び津名郡の五選挙区に対し、同法一五条七項但し書の規定を適用した。
(4) 昭和五五年の定数条例改正
神戸市葺合区と神戸市生田区とが合区され、新たに神戸市中央区が新設されたことに伴い、神戸市葺合区及び神戸市生田区の二選挙区が廃止され、神戸市中央区選挙区が新設されたことにより、選挙区数は、四六から四五に減少した。定数については、従前の神戸市葺合区選挙区の二人と、神戸市生田区選挙区の一人を合わせ、三人を新設の神戸市中央区選挙区に配分した。
(5) 昭和五七年の定数条例改正
昭和五五年の国勢調査の結果、地方自治法による兵庫県の議員定数の上限は、一〇五人となったが、総定数は、九一人に据え置かれたほか、次の改正が行われた。
神戸市西区が、神戸市垂水区から分離、独立したことに伴い、新たに、神戸市西区選挙区が設置され、この結果、選挙区数は、四五から四六に増加した。定数については、神戸市垂水区選挙区の四人のうち、一人を神戸市西区選挙区に配分した。
飾磨郡、佐用郡及び城崎郡(日高町を除く。)の各選挙区に対し、公選法二七一条二項の規定を適用した。また、人口異動に対応するため、次のとおり、選挙区別定数配分の是正を行った。
(選挙区名)(新定数)(旧定数)(比較)
神戸市中央区 二人 三人 一人減
神戸市長田区 三人 四人 一人減
明石市 四人 三人 一人増
加古川市 三人 二人 一人増
神戸市灘区、神戸市兵庫区、尼崎市、氷上郡及び津名郡の各選挙区に対し、公選法一五条七項但し書の規定を適用した。
(6) 昭和六一年の検討経緯
昭和六〇年の国勢調査の結果をもとに、県議会において定数条例改正の要否について検討を行った結果、改正を要しないとの結論に達した。
(四) 公選法二七一条二項の特例選挙区の合理性について
昭和六〇年の国勢調査の結果、特例選挙区とされているのは、佐用郡選挙区と城崎郡(日高町を除く。)選挙区である。
(1) 佐用郡選挙区
佐用郡選挙区は、昭和二二年四月の戦後第一回の県議会議員選挙以来、独立の選挙区として定数が一人配分されてきた。
この間の選挙区の人口を国勢調査でみると、昭和三五年が三万二四五五人、昭和四〇年が二万八九二一人、昭和四五年が二万六四一〇人と減少傾向にあり、昭和六〇年には、二万四五一六人となり、昭和三五年と比べて七九三九人(24.5パーセント)の減少となっている。
このため、昭和五四年四月の選挙時から、選挙区の人口を議員一人当り人口で除して得られた数(以下、「配当基数」という。)が、0.5を下回ることとなり、強制合区規定の対象となったが、公選法二七一条二項の規定を適用し、独立の選挙区として存置されることとなり、現在にいたっている。
佐用郡は、佐用町、上月町、南光町及び三日月町の四町からなり、西は岡山県に接し、東は県庁所在地の神戸市まで約八〇キロメートルの位置にある、中国山地に囲まれた面積305.86平方キロメートルの地域である。
産業は、農業が基幹産業であるが、千種川流域沿いの狭長な平地を除く大部分が棚田状の農地であり、経営規模も小さく、必ずしも農業条件に恵まれているとはいえない。このため、就労、通学の場を隣接する姫路市等の臨海工業地帯に求める者が全体の二〇パーセントを超えている。
各町の財政力は、極めて弱く、歳入に占める地方税の割合は、二〇パーセントにも満たず、「三割自治」にも達していない状況にある。そのため、財源調整制度である地方交付税交付金の歳入に占める割合は、県下町平均の30.3パーセントに対し、佐用町が38.8パーセント、上月町が41.3パーセント、南光町が49.5パーセント、三日月町が46.7パーセントと、いずれも極めて大きなものとなっている。
社会資本の整備状況を、町道の改良率でみると、佐用町が19.1パーセント、上月町が29.7パーセント、南光町が32.8パーセント、三日月町が37.5パーセント、郡全体では二七パーセントと、県下町平均の31.7パーセントを下回っており、また、下水道、浄化槽の整備状況を表す屎尿衛生処理率では、佐用町が64.1パーセント、上月町が46.6パーセント、南光町が44.4パーセント、三日月町が四九パーセントと、いずれも県下町平均の77.1パーセントを大きく下回る状況にあり、当該地域での社会資本の整備の遅れを表している。
また、文化、体育施設については、郡内に図書館はなく、体育館を設置しているのは、佐用郡のみである。さらに、これら四町の老齢化率は、17.9パーセントであり、県平均の10.3パーセントはおろか、県下町平均の14.8パーセントをも大きく上回る状況にある。
県下の均衡ある発展を図り、地方の時代にふさわしい良好な居住環境をつくるには、社会資本の整備とともに、文化、スポーツ施設の整備が不可欠である。これら施設の整備が遅れているこの地域を活性化し、安定化を進めるための行政課題は山積しているが、財政基盤の弱い郡内各町が単独でこれに対処するのは極めて困難であり、県行政に依存するところが大きい。
また、兵庫県では、西播磨四市一〇町について、通産省からテクノポリス地域の指定を受け、三日月町及び隣接する赤穂郡上郡町と揖保郡新宮町にまたがる二〇〇〇ヘクタールの西播磨新都市の建設を進めている。テクノポリスは、超LSIなどのエレクトロニクスや超精密機械などの先端技術を中核とする産業と、研究開発部門、良好な居住環境を有機的に結合させた「産・学・住」の三つの機能を有する新しい街づくりを進めるもので、西播磨新都市全体が完成する昭和七五年には、新たに三万六〇〇〇人がこれら地域に居住することになっている。
このように、当該地域は、過疎化が進行する経済力の乏しい地域であり、社会資本の整備を進め、地域の活性化により、人口の定住化を促進するためには、多くの行政需要をかかえ、財政基盤の弱いこれら四町だけでは、到底これに対応できないことや、地域内では、西播磨新都市建設という大プロジェクトが進められ、近い将来、人口が急増すると見込まれることに加え、地域からの代表確保の要請、県議会議員選出の歴史的経緯を総合的に勘案して、独立の選挙区として存置することにしたものである。
(2) 城崎郡(日高町を除く。)選挙区
本選挙区は、昭和二二年四月の戦後第一回の県議会議員選挙では、城崎郡選挙区として定数が二人配分されていたが、昭和二五年四月に、郡内の町村が合併して豊岡市となり、城崎郡から分離したため、定数配分は、城崎郡一人、豊岡市一人となった。それ以降、城崎郡は定数一人で選挙が実施されてきたが、昭和三七年に県議会議員の定数条例の全面改正において、城崎郡日高町の区域が、同郡内の他町の区域と、地勢および交通上、分断類似の状況にある等の理由により、隣接する出石郡と合併選挙区を構成することになったため、城崎郡選挙区から日高町が分離することとなったが、議員定数はそのままとされ、今日まで選挙が行われてきた。
この間の人口を国勢調査でみると、昭和三五年は三万一三二六人(日高町を除く。以下、同じ。)、昭和四〇年三万〇〇四七人、昭和四五年は二万八一九八人と減少傾向にあり、昭和六〇年には二万六五九六人となり、昭和三五年に比較して、四七三〇人(15.1パーセント)の減少となっている。このため、昭和五八年四月の選挙時から、配当基数が0.5を下回ることとなり、強制合区規定の対象となったが、公選法二七一条二項の規定を適用し、独立の選挙区として存置することとされ今日にいたっている。
城崎郡(日高町を除く。)は、城崎町、竹野町、香住町の三町からなり、北は日本海に面し、南は但馬地方の中心である豊岡市と接する典型的な裏日本式気候の土地で、面積は271.96平方キロメートルである。
産業については、城崎町は、関西屈指の温泉地で、第三次産業が町内生産所得の九七パーセント以上、就業者人口の八一パーセント以上を占める観光中心の町である。竹野町及び香住町は、農林水産業と、海水浴やカニすきを中心とする民宿業が主体となっているが、漁業については、資源の維持、培養、高次加工を含む市場対応力の強化が課題であり、民宿を中心とする観光についても、四季型、滞在型のリゾート地としての展開が必要である。
各町の財政力は弱く、歳入に占める地方税の割合は、三町平均で、24.4パーセントと県下平均の43.1パーセントはおろか、県下町平均の27.2パーセントをも下回っている。そのため、佐用郡と同様、地方交付税交付金の歳入に占める割合は、高く、県下町平均の30.3パーセントに対し、城崎町は34.1パーセント、竹野町は48.9パーセント、香住町29.1パーセントとなっている。
社会資本の整備状況については、町道の改良率において、城崎町9.6パーセント、竹野町23.1パーセント、香住町38.1パーセント、選挙区全体では27.9パーセントで、県下町平均の31.7パーセントをかなり下回っている。また、屎尿衛生処理率は、城崎町では一〇〇パーセント、竹野町で67.5パーセント、香住町85.5パーセントと、県下の他町と比べて比較的整備が進んでいる。
文化、体育施設については、図書館はなく、また、体育館は、竹野町と香住町に設置されているが、いずれも町立の施設ではない。
兵庫県では、各町の特性に合った地域活性化を図り、県内の均衡した発展を図るため、昭和六〇年一二月に、兵庫二〇〇一年計画を策定したが、右計画において、城崎町は、温泉を利用した滞在保養、コンベンション等の機能を備えた広域的観光拠点として、竹野町は、竹野海岸国民休暇村を中心とする四季型観光地として、香住町については、但馬地域はもとより、山陰地域における中核保養基地と水産加工流通基地として、それぞれ整備を進めることにしている。
このように、本地域は、過疎化が進み、社会資本の整備が遅れている地域として、行政需要が山積していること、財政力の弱いこれらの町にあっては、単独でこれに対処することは困難であり、県行政に依存しなければならないこと、さらには、地域からの代表確保の要請、県議会議員選出の歴史的経緯等を総合的に勘案して、独立の選挙区として存置することにしたものである。
(五) 本件定数条例の適法性
(1) 議員一人当り人口の較差
公選法で定める選挙区別の議員定数は、独立の選挙区とされたところには、配当基数が一未満であっても、最低限一人の定数配分がされるが、配当基数が一以上の選挙区については、当該配当基数の整数値を基に、その端数の数値が大きい順に、議員総定数に達するまで端数を切り上げることによって算出される。
ところで、(二)で述べたように、公選法では、配当基数が0.5以上一未満の郡市については、任意合区規定(同法一五条三条)の適用により、独立の選挙区とすることができ、配当基数が0.5以上の独立の選挙区であれば、一未満であっても、一人の定数配分がされることとなる。他方、配当基数が一以上の選挙区については、配当基数の端数が大きい順に切り上げられて定数が配分されるため、配当基数が1.5以上であっても、議員総定数との関係で、定数が一人しか配分されないことがある。その結果、配当基数が0.5で定数一人を配分される選挙区と、配当基数が1.5を超えても、なお定数が一人しか配分されない選挙区とが生じうることとなり、これらの選挙区間では、議員一人当り人口に一対三以上の較差が生じうることになる。すなわち、この程度の較差は、県議会が公選法に定める人口比例原則の例外規定を適用せず、配分規定を機械的に適用して、選挙区ごとの議員定数を配分しても生じうることになるのである。
したがって、その上に、公選法一五条七項但し書の規定を適用したり、同法二七一条二項の規定を適用するときは、右一対三程度の較差にとどまらず、それ以上の較差を生じることも、当然予想しうるところである。
この様な公選法の規定の仕方から判断して、法は、相当程度の較差の存在を許容しているものといわざるをえない。
本件選挙時の兵庫県の議員定数配分における最大較差は、特例選挙区である佐用郡選挙区と、神戸市西区選挙区との間に存在する4.52倍である。右較差が憲法及び公選法により県議会に付与された裁量権の行使の合理的範囲内にあることは、明かである。また、佐用郡選挙区に、公選法二七一条二項の規定を適用し、特例選挙区とすることの合理性については、(四)の(1)で述べたとおりである。
(2) なお、公選法一五条三項の適用については、任意合区規定に該当する郡市の区域がある場合に、これを独立の選挙区とするが、他の郡市の区域と合区するか、合区するならば隣接するいずれの郡市の区域と合区するかは、全て県議会において自主的に定めるべきことがらであり、同法一五条七項但し書の適用についても、何をもって特別事情とみるか、それをどのように考慮するか、いかなる状態をもって地域間の均衡が図られているとみるかといった点は、住民の代表たる議員により構成される議会が、地方自治の本旨に照らし、政策的判断を含む相当な裁量権を行使して決定すべきことがらである。
(3) 逆転現象について
逆転現象は、定数配分を人口比例の原則どおりに行えば生じないものであるが、県議会議員の定数配分は、地域間の均衡を考慮し、非人口的要素を勘案して行えるものであり(公選法一五条七項但し書)、この場合には逆転現象も生じることになる。すなわち、逆転現象については、それが、人口比例原則に対する例外として法が許容しているものと認められる場合について生じたものであるときは、直ちに、定数配分の違法を意味するものではない。また、仮に、選挙区ごとの議員定数が、当初、完全に人口比例の原則により定められたとしても、社会的、経済的変化の激しい時代にあっては、急激な人口異動が不断に生じるため、人口の近接した選挙区間では、容易に逆転現象が生じうることになるが、これを常に回避しなければならないとすれば、議員定数の改正を頻繁に行わなければならず、安定的に運用されるべき選挙制度の実態にそぐわないことになる。
本件選挙における議員定数配分については、二七通りの逆転現象が存在するが、これは、県議会が、人口比例の原則を基本に、地域内の均衡を勘案しつつ、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生じる人口の異動につき、その政治的意味をどのように評価し、政治における安定性の要請をも考慮しながら、これを、いつ、どのような形で選挙制度の仕組みに反映させるべきか、また、選挙制度の仕組みの変更に当たって予想される実際上の困難や、弊害を、どう解決するかなど、総合的に判断した結果生じたものであり、この程度の逆転現象は、公選法の許容するところである。
(六) 兵庫県議会の対応について
兵庫県議会は、現行の定数配分規定を検討すべく、昭和六一年六月五日、議会内に「議員定数等調査特別委員会」を設置し、委員会内に設けられた小委員会を中心に、協議、検討を行った結果、定数条例は、現行のままとするのが適当であるとの調査報告をした。県議会は、この調査報告を受け、現行定数配分規定を改正しないとの判断をしたものである。県議会は、定数問題を放置していたわけではない。
なお、定数条例を改正するには相当の期間が必要であるが、本件選挙については、基準とすべき昭和六〇年国勢調査人口が告示されたのが、昭和六一年七月二一日であり、選挙期日の昭和六二年四月一二日までの期間が極めて短かったことも考慮される必要がある。
(七) 以上のとおり、本件定数条例の議員定数配分規定に存在する議員一人当り人口較差、逆転現象は、未だ公選法の許容する範囲を逸脱するものではなく、右条例に基づき執行された本件選挙は、適法である。
(八) 事情判決の法理の適用
以上の主張が容れられず、現行定数条例が、違憲、違法であるとしても、これに基づく本件選挙を直ちに無効とすべきではなく、行訴法三一条一項に示された事情判決の法理を適用して、本件選挙の効力を認め、原告の請求はこれを棄却すべきである。
四 被告の本案前の答弁に対する原告らの反論
被告の主張する本案前の答弁の内容は、これまで本件と同種の多数の訴訟において、決まり文句のごとく被告とされた選挙管理委員会が主張しているところと全く同じである。このような本件訴訟と同種の訴訟そのものを不適法とする抗弁が容れられないことは、既に、最高裁判所の判例において判示されているとおりである。原告らは、敢えてその一つ、一つについて答弁しないが、被告主張の全部について争い、右本案前の答弁の不採用を求める。
五 被告の本案の主張に対する原告らの認否及び反論
1 原告らの認否
被告主張の定数条例改正の経過は、事実として認めるが、その余は、原告主張の請求原因の記載に反する部分を争う。
2 原告らの反論
(一) 選挙制度と立法裁量
選挙権の行使は、特定の選挙制度に従って行われるものであり、どのような選挙制度をとるかについて、国会、地方議会に、一定の立法裁量の余地のあることは否定できないが、一般に選挙制度といっても、さまざまなレベルの問題があり、そのレベルに従って、立法裁量の範囲と、それを覊束する憲法原則は、一様ではない。例えば、どのような代表制度をとるか、どのような投票方法をとるか等については、「議会は、国民(県民)の政治意思の縮図でなければならない。」という現代国民代表性についての憲法上の制約(憲法前文、一条、四三条一項)に服する他は、裁判所との関係での立法裁量の余地は、比較的広いということができる。
次ぎに、選挙区制をとる場合に、その大きさないし単位をどのようにするか、議員の総定数を何人にするかというレベルの問題があるが、ここでも、それが政治的縮図の作り方にかかわる限りでは、立法裁量の余地を比較的広く考えることができるが、それが選挙権の平等という個人の権利にかかわる場合には、立法裁量の余地は、限定されたものになり、さらに、具体的な選挙区の決定と、そこへの議員定数の配分というレベルの問題については、投票価値の平等という憲法上の要請が、最も重要でかつ基本的な原則として強く働き、立法裁量の余地は、極めて限定されたものでしかなく、立法者は、可能な限り、投票価値の平等を実現するように義務づけられているのである。
被告は、代表民主制のもとにおける地方議会の選挙制度は、そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではないとし、議会の広範な立法裁量権を主張して、投票価値の平等という憲法上の要請を軽視するが、それは、前記のような様々なレベルの問題を混同するものであって、選挙制度に対する立法裁量を認めることと、投票価値の平等の要請とは矛盾するものではない。
(二) 地方自治における民主主義
被告は、地方自治は民主主義の根幹であり、国の関与をできるだけ排除し、地方の行政は、その構成員である住民自らの手で処理させることを基本に、住民が選んだ首長と議会を中心として、自主的に運営されるべきであると主張するが、これは、地方公共団体の議会に、自由に、定数、選挙区及び選挙区別定数を決定する裁量権を与えたことを意味しない。かえって、民主主義の根幹であるからこそ、地方自治体は、民主主義の最低条件である選挙に関する憲法上の諸原則を厳格に実施すべきである。
次ぎに、被告は、首長が住民全体を選出基盤とするのであるから、これに対応する議会議員の選挙についても、地域的にまとまりのある選挙区を設定し、その地域代表的性格をも保有せしめる制度とするのが最も好ましいと主張する。確かに、議会議員を地域的にまとまりのある選挙区を単位として選出することは、議員と住民との密接な結び付きを確保する手段として一つの好ましい立法政策であるし、その様にして選出された議員が、地域住民の利害や意見を代表する役割を果たすことも、一概に否定されるべきこととはいえないが、このことと、選挙制度として地域代表制度をとることとは、別のことがらであり、現行公選法が地域代表的制度をとっていない以上、被告の右主張には、論理の飛躍がある。
また、被告は、選挙制度を考えるに当たっては、政治における安定の要素を考慮しなければならないと主張するが、それが、安定した執行部の創設を意味するとすれば、地方公共団体においては、首長について、いわゆる大統領制を採用しているのであるから、考慮する必要のない要素であるし、それが、選挙区を頻繁に変更することが望ましくないことを意味するとしても、これは、定数是正のために議会に許される合理的期間にかかわる問題であって、人口比例原則の緩和を合理化する根拠にはならない。
(三) 公選法の解釈
(1) 憲法上の原則の具体化
公選法一五条は、その一項で、「都道府県の議会の議員の選挙区は、郡市の区域による。」と定め、二ないし四項及び六項で、その選挙区の設けかたを指示し、さらに、七項で、「各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。」と規定している。これらの規定の基本的趣旨、枠組みは、次の四点である。
① 「選挙区選挙」 都道府県議会議員については、地域住民との密接性を確保して、住民の意思や利害が正しく議会に反映されるように、選挙区単位で選出される。
② 「郡市単位選挙」 わが国の過去における選挙のありかたを尊重し、かつ、ゲリマンダリング等の恣意的な選挙区割りを避けるため、選挙区の基本的な単位は、郡市とすべきこととする。
③ 「人口比例原則」 選挙区単位で議員を選出する場合には、選挙人の投票価値の平等、すなわち人口比例原則を、最も重要、かつ、基本的な原則とする。
④ 「自主立法」 具体的な選挙区割り、定数配分は、都道府県が自主的に条例で定めることとする。
これを選挙に関する憲法上の原則との関連でみると、①については、立法者に広範な立法裁量の余地が認められるべきであるが、③については、投票価値の平等という憲法上の原則的要請を法律上具体化したものであり、立法裁量の余地はない。②については、選挙区の基本的単位を郡市とするか、市町村とするかのレベルでは、国会に立法裁量の余地がかなり認められるが、③の投票価値の平等を侵害する裁量の余地はない。④は、憲法上の地方自治の保障に基づく当然の規定であるが、都道府県議会が、具体的な選挙区割り、定数配分を決定するに当たっては、①ないし③に拘束されることはいうまでもない。
公選法上の都道府県議会議員選挙にかかわる諸規定は、選挙に関する憲法上の諸原則に則り、それを法律上具体化した右①ないし④の趣旨に基づいて、体系的に解釈しなければならない。とりわけ、具体的に問題となるのは、右③の原則である。公選法一五条七項本文は、文理上、一定の選挙区割りを前提に、人口に比例した議員定数配分を要求する形になっているが、人口比例原則の憲法上の意義、及び、それを法律上具体化した立法者の基本的政策決定態度に鑑みると、人口比例原則は、選挙区への定数配分のみならず、具体的な選挙区割りをも拘束する原則であるといわなければならない。
(2) 公選法一五条二項、三項について
被告は、公選法一五条二項、三項の規定をもって、同法が、一対三程度までの定数較差を許容する趣旨であると主張するが、このような理解は、憲法及び公選法の体系的、原理的な解釈にそぐわない。
同条項の規定は、憲法上の原則的要請であるとともに、立法者が、最も重要、かつ、基本的要素としたところの、人口比例原則、すなわち、投票価値の平等に反する結果をもたらすものであってはならない。投票価値の平等を達成するには、①議員の総定数の増員を図るか、②定数の再配分を図るか、③選挙区割りの変更をするか、のいずれかによることになるが、憲法及び公選法は、地方議会に、これらのいずれかの方法によって、投票価値の平等を実現することを義務づけているのである。もっとも、地方自治法九〇条が、都道府県議会の議員の定数の上限を定め、また、公選法一五条一項が、選挙区を「郡市の区域による」と定めているところから、①、②、の方法には限界がある。したがって、公選法は、地方議会が自主的に選挙区割りを変更する手段を与えなければならず、そのための規定が、同法一五条三項の任意合区の規定である。すなわち、同法一五条三項の任意合区規定は、憲法及び公選法が、強く要請し、義務づけている投票価値の平等を、地方議会が、自主的に実現することのできる手段を保障するための規定であって、この規定をもって、合区するか否かについての自由裁量権を地方議会に委ねたものと解することはできず、①、②の手段をもってしても、投票価値の平等を実現しえないにもかかわらず、合区しない場合には、合区することのできない「特別の事情」が立証されなければならないと解される(同法一五条七項但し書参照)。
同法一五条二項の強制合区規定も、地方議会の自主的な努力を尊重するための規定であって、①、②の手段を用いても、一対二以上の較差を生じることが、数値の上からも明白になるまでは、地方議会の自主性を尊重し.選挙区割りの判断についての地方自治に国が介入するのを差し控える趣旨の規定と解することができる。
(3) 公選法二七一条二項について
同法一五条二項の強制合区の規定を「当分の間」排除できることを規定している同法二七一条の二項のいわゆる特例選挙区の規定は、より厳密な解釈を必要とする。地方議会の裁量により、自由に特例選挙区とすることができるならば、憲法の要請する投票価値の平等は、無に帰するも同然だからである。同法二七一条二項の適用にあたっては、島部選挙区のように、地理的に極めて特殊な状況にあって、合区することが著しく困難な選挙区であるなどの特別の理由が示されなければならない。
このことは、本条項の立法経過からみても明かである。本条項は、昭和三七年に新設され、同四一年に改正されて現行の規定になったものであるが、新設時代には、島部選挙区に適用を限定していたのであって、その基本的な性格は、改正後も変わっていないというべきであり、過疎地域であることによる行政需要の必要性のみを特例選挙区とした理由に挙げる被告の主張は、同法二七一条二項の適用に際して要求される特別な理由として不十分である。
(4) 公選法一五条七項但し書について
一般に、但し書は、本文の定める原則に対する例外を定めるものであるから、原則を緩和することになるのは当然であるが、同時に、原則を著しく離れることはできないという本質的制約がある。同法一五条七項本文は、二つの意味を持ち、但し書もそれに応じた二つの意味を有している。
第一に、同法一五条七項は、憲法上の投票価値の平等の要請を、公選法上具体化し、強く要求している規定である。したがって、同法一五条七項の要求する人口比例の原則は、単に選挙区割りを前提とした上で、定数配分が人口に比例して行われるべきことのみを要求するものではなく、選挙区割り自体をも、その射程距離内に含むものである。配当基数に基づき、正確に定数を配分しても、投票価値の不平等が生じる場合には、地方議会は、前記①、②の手段を活用して投票価値の平等の実現を図るべく義務づけられている。この場合の但し書の意義については、前記同法一五条三項の解釈で述べたとおりである。
第二に、同法一五条七項は、具体的な選挙区割りを前提にした上で、議員定数配分が正確に人口に比例して行われるべきことを要求している。この場合、但し書は、人口比例原則に対する例外を許容する規定となるが、次の三要件を充たす場合にのみ、例外が許容される。まず、①「特別の事情」があることであり、議会は、右「特別の事情」があることを立証しなければならない。次に②「地域間の均衡を考慮」した結果であることであり、これも、議会がどのように考慮したかを立証しなければならない。さらに、③「おおむね人口を基準」としていることが必要である。「おおむね人口を基準」としなければならないのであるから、①、②を考慮した結果であっても、一対二以上の較差の存在は、正当化されえない。一人二票を投票する効果を持つ選挙区が存在することは、人口比例原則の極めて重大な侵害であり、原則の例外として許容できるものではないからである。また、但し書が、配当基数に基づく正確な定数配分に対する例外であるとしても、「おおむね人口を基準」としなければならないのであるから、配当基数の整数値の定数配分は確保されなければならない。
以上、いずれにしても、但し書の規定をもって、一対二以上の較差の存在を正当化することはできない。但し書の規定は、議会の怠慢を正当化するものではない。被告は、本件選挙において、配当基数による配分定数を下回る選挙区が七選挙区、うち、配当基数の整数値すら確保しえない選挙区が四選挙区存在することの正当化事由について、なんら言及することがない。
(5) 公選法一五条二項、三項、七項但し書及び二七一条二項の規定は、以上のように解釈されてこそ、はじめて、憲法に違反しないものであるということができる。
被告主張のように、公選法一五条二項、三項の規定により、同法が三倍までの較差を認めていると解したり、同法二七一条二項の規定は、さらにそれ以上の較差をも是認していると解するのは、憲法に適合する解釈といえず、仮に、そのようにしか解釈できないとすれば、これら諸規定は、違憲、無効な規定といわざるをえない。
(四) 本件選挙における特例選挙区について
被告は、佐用郡選挙区と城崎郡(日高町を除く。)選挙区は、公選法二七一条二項の適用される特例選挙区であるから、現行の定数較差は、合法であると主張する。しかし、前述のとおり、特例選挙区の規定は、憲法、公選法の強く要求する人口比例原則に対する重大な例外であって、同条項を適用したからといって、そのこと自体から、定数較差を合法とすることはできない。
(1) この二選挙区を特例選挙区とする事情として、原告が主張するところは、いわゆる行政需要論、地域からの代表確保の要請、選挙区としての歴史的経緯に尽きるが、これらの事情は、この二選挙区に特有なものとして主張しているわけではなく、また、特有のものとして認めるべき根拠もない。前述のごとく、特例選挙区は、人口比例原則の例外であるから、離島である等、他の選挙区と合区することのできない、当該選挙区の特有の事情が立証されない限り、公選法二七一条二項を適用することは許されない。佐用郡選挙区にも、城崎郡(日高町を除く。)選挙区にも、そのような事情は存在しない。
(2) 公選法二七一条二項は、右のように解しない限り、憲法一四条に違反するといわなければならないが、仮にそうでないとしても、公選法二七一条二項は、「当分の間」という限定づきの特例選挙区の存在を許容しているにすぎない。これは、急激な過疎化に対処するための時間的な余裕を地方議会に与える趣旨と解することができないではないが、国勢調査結果によれば(別表「人口増減表」参照)、佐用郡選挙区、城崎郡(日高町を除く。)選挙区は、共に、戦後一貫して徐々に人口が減少してきた地域であり、その結果として、佐用郡選挙区は、昭和五〇年国勢調査結果の判明した時点から、また城崎郡(日高町を除く。)選挙区は、昭和五五年国勢調査結果の判明した時点から、いずれも、配当基数が0.5を下回る強制合区対象選挙区となっていた。それ以来、本件選挙時まで、それぞれ一二年及び七年が経過し、県議会議員選挙も、佐用郡で三回、城崎郡(日高町を除く。)で二回行われている。
右両選挙区は、強制合区対象選挙区となる以前から、他の選挙区との間で大きな定数較差を生じていた。例えば、昭和四五年国勢調査結果によれば、川西市、川辺郡選挙区の議員一人当り人口が、佐用郡選挙区の3.57倍、城崎郡(日高町を除く。)選挙区の3.34倍に達していたのをはじめ、佐用郡選挙区との較差が二倍以上の選挙区が、四四選挙区中一九選挙区あり、城崎郡(日高町を除く。)選挙区との較差が二倍以上の選挙区が、一四選挙区に達していた(昭和四六年選挙時における較差状況は、別表③のとおり)。両選挙区の徐々にではあるが、一貫して人口減少傾向に注意して、兵庫県議会が、公選法一五条三項の任意合区規定を活用するなどの有効な対策を講じておけば、今日のような極端な定数の較差を生じることはなかったはずである。
したがって、仮に、両選挙区を公選法二七一条二項の特例選挙区とすることができるとしても、同条項のいう「当分の間」という時間的余裕は、すでに経過しているといわなければならない。
以上のとおり、佐用郡選挙区及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区の本件選挙時における定数較差は、公選法二七一条二項を適用することによって、合理化することができない。
(3) 本件選挙時における佐用郡選挙区及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区を基準にした較差は、次のとおりである。
① 対佐用郡選挙区較差
最大4.52倍(西区選挙区)
較差二倍以上 二五選挙区
較差三倍以上 一一選挙区
② 対城崎郡(日高町を除く。)選挙区較差
最大4.17倍(西区選挙区)
較差二倍以上 二二選挙区
較差三倍以上 八選挙区
(五) 特例選挙区以外の選挙区について
前述のように、佐用郡選挙区及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区を公選法二七一条二項所定の特例選挙区とすることは、本来許されないところであるが、この両選挙区を除いても、現行定数条例は、憲法、公選法上許容しえない大きな較差を生じさせている。
本件選挙時における、飾磨郡選挙区及び美方郡選挙区を基準とした較差は、次のとおりである。
① 対美方郡選挙区較差
最大3.50倍(西区選挙区)
較差二倍以上 一五選挙区
較差三倍以上 二選挙区
② 対飾磨郡選挙区較差
最大3.82倍(西区選挙区)
較差二倍以上 一九選挙区
較差三倍以上 七選挙区
(六) 本件定数条例の違法性
被告は、公選法は、選挙区間の一対三程度の較差を許容する趣旨であると主張するが、憲法及び公選法の人口比例原則に関する諸規定の趣旨は、総定数の増加、定数の再配分、任意合区規定の活用によって、定数較差を一対二以内に収めることを強く要求するものである。本件定数条例は、次に述べるように、公選法の規定に従った定数配分をせず、また、県議会が、同法の規定の趣旨に従うべく可能な努力をしてきたともいえない。
(1) 佐用郡選挙区及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区が、強制合区対象選挙区であるにもかかわらず、合区しないまま放置してきた。
(2) 飾磨郡選挙区が、昭和四五年国勢調査結果の判明した時点から昭和六〇年国勢調査結果の判明した時点まで、強制合区対象選挙区であったにもかかわらず、これを放置してきた。
(3) 配当基数により必要とされる議員定数と配分された定数の異なる選挙区が、四六選挙区中一三選挙区(配当基数による定数より現実の定数が一人少ない選挙区が七選挙区、逆に一人多い選挙区が五選挙区、二人多い選挙区が一選挙区)ある。
(4) 地方自治法上、兵庫県議会の議員の総定数の上限は、一〇七人であるにもかかわらず、現実の議員定数は、右法定数を大きく下回った九一人にとどめられている。
(5) 総定数を低くおさえるなら、任意合区規定を活用して人口比例原則を実現するべきであるのに、昭和四一年に定数条例を制定して以来、一度も合区をしたことがない。
(七) 逆転現象
本件選挙時における本件定数条例によれば、逆転現象が二七通り存在すること、それが人口比例原則を、根本的に無視、否定するものであることは、さきに述べたとおりであり、公選法が、これを予定するものでないことはいうまでもない。地方議会議員選挙につき公選法は、人口比例原則を強く要求している。もっとも、公選法一五条七項但し書を適用した場合、いくつかの選挙区間で逆転が生じることがないではないが、その場合にも、「おおむね人口を基準とし」なければならないから、配当基数の整数値を確保したうえで、小数点以下の微調整の段階での逆転にとどまらなければならず、また、「特別事情」の存在と「地域間の均衡を考慮」したことが立証されなければならない。
本件選挙時における本件定数条例のもとでの逆転は、これらの条件のいずれをも満たしていない。
(八) 定数是正のあり方について
兵庫県議会議員選挙の場合、現行の選挙区割りを前提にする限り、議員総定数を一〇七名にしても、二倍以上の較差を生じることは明らかである。したがって、人口の少ない選挙区の合区をすることが、避けられない課題となってくる。原告の試算するところによれば、佐用郡を揖保郡と、城崎郡(日高町を除く。)を美方郡と、飾磨郡を神崎郡と、それぞれ合区すれば、議員総定数を九八名と増加することにより、最大較差を二倍以内に収めることが可能である。しかも、この場合、佐用郡、揖保郡両選挙区は、従来それぞれ一名の議員を選出していたところ、合区によっても、二名の議員を選出することができ、飾磨郡、神崎郡両選挙区についても同様であるが、城崎郡(日高町を除く。)、美方郡両選挙区が、合区によっても、一名の議員しか選出できないことを除けば、被告のいう「地域代表の確保」も可能である(別表①参照)。
さらに、養父郡、多可郡、加東郡、出石郡、日高町、朝来郡などの各選挙区を合区すれば、議員総定数を九一名に据え置いたままでも、較差を二倍以内にすることが可能である(別表②参照)。
(九) 是正のための合理的期間について
違憲、違法な状態にある定数配分を是正するための合理的な猶予期間が議会に認められることは、いうまでもないが、本件の場合、右合理的な猶予期間がすでに徒過していることは、さきに、原告が述べたとおりである。
なお、昭和四六年実施選挙時から同五八年実施選挙時までの各選挙実施時における較差の状況は、次のとおりである。
(1) 昭和四六年選挙時(同四〇年国勢調査人口による。)
対飾磨郡 最大較差 2.82倍
較差二倍以上 一八選挙区
較差三倍以上 なし
逆転現象 なし
(2) 昭和五〇年選挙時(同四五年国勢調査人口による。)
対飾磨郡 最大較差 3.95倍
較差二倍以上 二四選挙区
較差三倍以上 二選挙区
逆転現象 四通り
特例選挙区とされた飾磨郡選挙区を除いた場合
対佐用郡 最大較差 3.57倍
較差二倍以上 一九選挙区
較差三倍以上 一選挙区
選挙時に基準とすべき人口については、原則として、官報で公示された最近の国勢調査の結果によることとされているが、官報で公示された人口の調査期日以後に、指定都市の区が新たに画され、又は、区の地域が変更されたときなどは、地方自治法施行令一七七条の規定によって、都道府県知事が告示した人口を用いることとされている(公選法施行令一四四条)。昭和五〇年選挙における神戸市北区及び同市兵庫区の両選挙区の基準とすべき人口としては、昭和四八年八月一日に北区が兵庫区から分離して新設されたため、右規定に基づき、兵庫県知事が昭和四八年八月一五日付で告示した人口(北区一〇万六一〇一人.兵庫区一六万三三四一人)を用いることになるが、他の選挙区について、昭和四五年国勢調査の人口により、右両選挙区についてのみ昭和四八年の人口を用いることは、全体を比較するうえでの整合性をもちえないので、右両選挙区についても、昭和四五年国勢調査人口を、昭和五〇年一〇月一日現在の境界により組替えた人口を用いた。
(3) 昭和五四年選挙時(同五〇年国勢調査人口による。)
対飾磨郡 最大較差 3.65倍
較差二倍以上 二三選挙区
較差三倍以上 六選挙区
逆転現象 一二通り
特例選挙区とされた佐用郡、飾磨郡各選挙区を除いた場合
対城崎郡(日高町を除く。)
最大較差 3.30倍
較差二倍以上 一八選挙区
較差三倍以上 二選挙区
なお、同年実施選挙時における人口及び較差の状況は、別表一記載のとおりである。
(4) 昭和五八年選挙時(同五五年国勢調査人口による。)
対佐用郡 最大較差 3.69倍
較差二倍以上 二五選挙区
較差三倍以上 八選挙区
逆転現象 二一通り
特例選挙区とされた佐用郡、城崎郡(日高町を除く。)、飾磨郡各選挙区を除いた場合
対美方郡 最大較差 2.80倍
較差二倍以上 一三選挙区
較差三倍以上 なし
なお、同年実施選挙時における人口及び較差の状況は、別表二記載のとおりである。
(一〇) 本件選挙の効力
(1) 兵庫県議会議員選挙に関する現行定数条例が、違憲、違法であることは、明かであり、憲法が国の最高法規であることを定める憲法九八条一項の規定や、条例は法律の範囲内で定めることができるとする憲法九四条の規定からすれば、違憲、違法な現行定数条例は、無効なものとして、その効力を否定され、無効な現行定数条例に基づいて行われた本件選挙も、無効なものとして、その効力が否定されるべきことは当然である。
ところで、投票価値の平等が憲法の要請するところであることを明確にした、最高裁昭和五一年四月一四日大法廷判決(民集三〇巻三号二二六頁)は、当該衆議院議員選挙における定数配分を違憲としながら、行訴法三一条一項のいわゆる「事情判決」の規定に含まれる基本原則の適用により、選挙自体は有効とした。そして、これまでの定数不均衡訴訟においても、その定数配分が違憲、違法とされながら、選挙自体は、有効とする事情判決が行われてきた。
右昭和五一年四月一四日の最高裁判決が、定数配分不均衡を違憲とした時点では、当該選挙を無効とすることにより、憲法上所期するところに反する結果を招来することを考慮しただけでなく、定数不均衡についての裁判所の判断が十分に明らかにされていなかったことをも配慮して、右事情判決がされたと思われるが、右判決以後、一〇年余を経過し、数多くの判決があったことにより、議会も、裁判所の判断を十分に知りうる状況になった。このような状況のもとでは、第一回目には事情判決をすべきであるとの配慮をする必要は、もはや失われたというべきである。
このような観点からすれば、定数配分不均衡状態が長期にわたって継続し、不均衡状態に大きいものがあり、議会の是正のための努力が殆どなされず、将来の是正の可能性も認められない場合には、裁判所は、もはや事情判決をすることなく、最初から、選挙が無効であるとの判決をするべきである。
(2) 本件県議会議員選挙についてみるに、その定数配分は、少なくとも一〇年を超えて違憲、違法な状態が継続し、その最大較差4.52倍は、本件選挙実施時点において四七都道府県中三位であり、県議会は、「議員定数等調査特別委員会」を設置して検討したが、定数条例は、現行のままで良いとして、なんら是正をしなかった。前述のとおり、本件選挙実施以前において、既に定数配分不均衡訴訟の判決は多数あり、地方議会議員選挙についても、三件の最高裁判決があった。また、市民団体の要望書、請願の提出が再三にわたり、行われていたのであって、このような事情を勘案すると、本件訴訟においては、単に、現行定数条例が違憲、違法であることを宣言するにとどまらず、選挙無効判決をすべきものである。
定数不均衡訴訟においては、定数条例自体が違憲、違法であるために、選挙が無効となるのであるから、再選挙を実施するには、定数条例自体の改正をしなければならないが、公選法三四条一項によれば、地方議会議員の再選挙は、判決確定後五〇日以内に実施されるべきものとされ、この期間内に条例改正を行い、再選挙を実施することは、多少、困難であるとはいえ、議会が十分な努力をすれば不可能なこととはいえない。
(3) また、憲法、公選法の精神は、本来、議会自らが、常に、配分規定が適正であるか否かを検討し、十分な努力をすることによって、適法、妥当な改正をすることを期待していると解すべきであるから、いわゆる「期限付無効判決」、「将来効判決」をすることも可能である。すなわち、選挙無効を宣言しながら、その効力の発生を九〇日後にすることにより、議会に、条例改正のための時間的猶予を与えるのである。この場合、公選法の規定に反することとなるが、定数不均衡訴訟については、基本的な政治的権利である選挙権の救済のために、議会の是正を確実に可能にするという見地から認められるべきである。
このように、裁判所が、議会に対して時間的猶予を与えたのに、議会が、条例の改正を行わないという事態が生じた場合には、裁判所が作成した定数配分表に基づいて再選挙を実施すべく、そのために、裁判所は、主文において選挙の無効を判示するのみならず、申立により、当事者から示された配分規定に基づき、適法な配分規定を判示する権限と責任があるというべきである。
原告らは、既に、最小限の是正によっても、較差を二倍以内に収めることができる配分表(別表①、②)を示しているが、本件訴訟において、原告らが問題にしているは、選挙制度のありかたは、住民の意思が公正に議会に反映されることを確保するものでなければならないということにある。このような観点にたって、二倍以内への較差是正を行うとすれば、議員定数の法定数への引き上げ、一人区の解消、任意合区規定の活用による定数配分が必要である。このような観点にたって定数配分したものが別表④の配分表である。
(4) 選挙を無効とすることによって生ずる結果について、国会議員選挙の場合には、憲法が議院内閣制を採用しているところから、内閣の存在の正当性に疑義が生じるが、地方公共団体においては、首長は、住民の直接公選によって選出されており、議会議員選挙の有効性にかかわりなく正当に存続しうる。すなわち、地方議会議員の選挙が無効になることによる地方公共団体の組織、運営における弊害は、国会議員選挙が無効になる場合に比して、その弊害の程度は、少ないと考えてよい。
(5) 原告らは、裁判所が、本件につき、単に違憲、違法を宣言するのみならず、本件選挙無効の判決を言い渡されんことを求めるものである。
六 原告らの反論に対する被告の認否及び主張(再反論)
1 被告の認否
(一) 別紙佐用郡、城崎郡(昭和四〇年以降は日高町を除く。)の人口増減表については、人口数という観点からは認める。
(二) 本件選挙時における佐用郡及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区を基準とした較差、右両選挙区を除き、飾磨郡選挙区及び美方郡を基準とした場合の較差の数値が、いずれも原告主張のとおりの数値であること、昭和四六年選挙時(同四〇年国勢調査人口による)における対飾磨郡最大較差は2.82倍、較差二倍以上の選挙区は一八、較差三倍以上の選挙区及び逆転現象がなかったことは、いずれも認める。
(三) 選挙時に基準とされる人口は、原則として、官報で公示された直近の国勢調査の結果によることとされているが、官報で公示された人口の調査期日以後に、指定都市の区が新たに画され、または、区の区域が変更されたときなどは、地方自治法施行令一七七条の規定によって、都道府県知事が、告示した人口を用いることとされていること(公職選挙法施行令一四四条)、昭和四八年八月一日に北区が兵庫区から分離して新設されたため、同条の規定によって、兵庫県知事が昭和四八年八月一五日付で両選挙区の人口を、北区・一〇万六一〇一人、兵庫区・一六万三三四一人と告示したことは原告ら主張のとおりである。したがって、基準とされる人口としては右告示にかかる人口を用いるべきであり、右人口を基準とすれば、昭和五〇年選挙時における、対「飾磨郡選挙区」較差二倍以上の選挙区は、二五選挙区であり、逆転現象は、三通り、対「佐用郡選挙区」較差二倍以上の選挙区は、二〇選挙区である。その余の昭和五〇年選挙時の較差、逆転現象等の数値が原告主張のとおりであることは認める。
(四) 昭和五四年選挙時の較差及び逆転現象の数値が原告主張のとおりの数値であること。別表一(昭和五四年選挙時)記載の数値は認める。
(五) 神戸市西区は、昭和五七年八月一日に同市垂水区から分離して新設されたため、昭和五八年実施の選挙時における垂水区、西区の両選挙区の基準とすべき人口は、前記のとおり、地方自治法施行令一七七条の規定によって、兵庫県知事が昭和五七年八月一三日付で告示した人口(垂水区・二一万〇七八九人、西区・八万八九一一人)を用いることになる。したがって、別表二(昭和五八年選挙時)記載の数値中、垂水区及び西区の両選挙区に関する部分を否認し、その余は認める。右基準とすべき人口によれば、議員一人当りの人口は、垂水区が七万〇二六三人、西区が八万八九一一人であり、「佐用郡選挙区」を一とした較差は、垂水区が2.82倍、西区が3.57倍である。
(六) 昭和五八年選挙時の較差は、逆転現象の数値が原告主張のとおりの数値であることは認める。
(七) なお、別表①②④に記載の数値は不知。
(八) 以上の外、原告の反論の主張は争う。
2 被告の主張(再反論)
(一) 「期限付無効判決」及び「将来効判決」について
原告らは、議会に定数条例改正のための時間的猶予を与えるため、「期限付無効判決」、「将来効判決」を認めるべきであると主張する。
しかしながら、かかる判決は、現行の公選法に根拠となる規定がなく、これを認める余地がない。
さらに、「期限付無効判決」、「将来効判決」がいい渡された場合においても、定数配分規定の改正が必要であり、結局、原告らの請求の目的を達成するための再選挙は、不可能であるといわざるをえない。
すなわち、裁判所が選挙無効の効力の発生を猶予した一定期間内において、議会は、定数条例の改正を行うことになるが、無効とされた六選挙区の議員数を増加せざるをえず、地方自治法九〇条四項及び公選法の諸規定に抵触することになり、結局、改正後の定数配分規定による選挙を執行することができるのは、現行法上、次の一般選挙をまたなければならず、原告らの請求に適合する再選挙はできない。
(二) 裁判所による定数配分規定の判示について
原告らは、裁判所が議会に時間的猶予を与えたにもかかわらず、定数配分を行わないことを想定して、裁判所は、当事者から示された配分規定に基づき、適法と考える定数配分を予め判決で示しておくことも考えられると主張するが、定数配分規定の作成は、まさに、議会の立法裁量に属することであって、裁判所が、議会により制定された定数配分規定につき、違憲性、違法性の判断をするにとどまらず、判決で適法と考える定数配分規定を判示することは、司法権の範囲を逸脱したものである。
(三) 選挙無効の場合における地方公共団体の組織、運営上の弊害について
原告らは、選挙無効とされたことによる地方公共団体の組織、運営における弊害は、国会議員選挙の無効の場合に比して、その程度が少ないと主張するが、仮に、定数配分規定が無効とされ、選挙が全て無効となった場合には、地方公共団体においては、議会が一院制であるため、議員が全て失格し、議会そのものが存在しなくなるため、議会を欠いた状態で運営しなければならなくなり、その機能は、麻痺状態に陥ることは明らかである。また、仮に、選挙の一部が無効とされた場合には、議員の一部が資格を奪われることになり、当該選挙区の議員が欠けることになった地方議会は、その機能が停止されないまでも、不正常な状態に陥ることは疑いなく、殊に、都道府県議会については、その地域代表的性格からしても、団体意思決定機関としての役割を果たすことができなくなるため、地方公共団体の運営についての弊害は多大である。
いずれの場合においても、地方公共団体の組織、運営における弊害は、首長が直接公選されていることによって少なくなるものではなく、重大であるといわなければならない。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1、2の各事実、すなわち、原告らは、本件選挙の別紙選挙区目録記載の各選挙区における選挙人であり、被告は、本件選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会であること、原告らは、昭和六二年四月二〇日、被告に対し、本件選挙が憲法、公選法に違反する本件定数条例(配分規定)に基づき施行されたものであるから、無効であるとして異議申出をしたが、被告は、同年五月一二日、これを却下するとの本件決定をし、翌一三日、原告らに決定書を交付したことは、いずれも当事者間に争いがない。
二本件訴えの適法性
1 被告は、地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた規定自体の違憲、違法を理由とする右議員の選挙の効力に関する訴訟は、公選法の予定するところではなく、原告らが同法二〇三条の規定による訴訟として提起した本訴は、違法であり、このような訴訟において、定数配分規定を是正する権限をもたない選挙管理委員会には被告適格がなく、いずれにしても本訴は、不適法であって却下を免れない、と主張する。
しかしながら、定数配分規定自体の違憲、違法を理由とする地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟が、公選法二〇三条の訴訟として許されることは、最高裁判所の判例(昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日大法廷判決・民集三〇巻三号二二三頁、昭和五六年(行ツ)第五七号同五八年一一月七日大法廷判決・民集三七巻九号一二四三頁、昭和五九年(行ツ)第三三九号同六〇年七月一七日大法廷判決・民集三九巻五号一一〇〇頁)の趣旨に徴して明らかであり(昭和五八年(行ツ)第一一五号同五九年五月一七日第一小法廷判決・民集三八巻七号七二一頁参照)、この点に関する当裁判所の見解も、右最高裁判所判決の説示するところと同一であるから、被告の右主張は、採用することができない。
2 被告は、地方自治法九〇条四項によれば、都道府県議会議員の定数の変更は、一般選挙の場合でなければできないとされ、論理上、選挙区別定数の変更もまたこれと同様に解され、したがって、都道府県議会議員については、たとえ定数配分規定を改正したとしても、次の一般選挙の場合でなければ、改正規定に基づく選挙を行うことができないから、選挙を無効としたところで、是正された定数配分規定に基づく再選挙の実施は、次の一般選挙の時まで、現行法上不可能であり、このような是正不可能なことを目的とする訴えは、訴えの利益を欠く不適法なものとして却下を免れない、と主張する。
しかしながら、公選法二〇三条による訴訟は、違法に施行された選挙の効力を失わせ、速やかに当該選挙に関する瑕疵を是正し、改めて適法な選挙を施行させることを目的とするものであるから、当該選挙により選出された議員の任期内でなければその目的を達し得ないことはいうまでもなく、たとえ、選挙に関する瑕疵(違憲、違法な定数配分規定)を是正しても、これに基づく選挙が任期満了等による次の一般選挙の場合でなければ施行され得ないとすれば、もはやそれは選挙の効力に関する訴訟として意味がなくなるといわなければならず、定数配分規定の違憲、違法を理由とした選挙についても、公選法二〇三条の規定による無効訴訟を認める以上、このような解釈は背理であり、許されないものといわなければならない。
したがって、地方自治法九〇条四項の規定は、定数配分規定が当該選挙の施行当時において既に違憲、違法であったとされる場合にまで、次に施行される任期満了等による(公選法二〇三条の規定による訴訟とは無関係の)一般選挙の時期の到来に至るまでの間、是正前の規定による定数配分の結果を維持せしめようとする趣旨のものであるとは解しがたく、定数配分規定の違憲、違法を理由として選挙を無効とする判決があったときは、これに従い、議会において速やかに違憲、違法の定数配分規定を改正したうえ、選挙管理委員会において改正規定に基づく適法な選挙を施行すべきものである。
被告は、これと異なる見地に立って、本件訴訟を不適法とするものであり、その主張は、採用することができない。
3 前記認定のとおり、原告らの公選法二〇三条一項による異議申出に対する本件決定が原告らに交付されたのは、昭和六二年五月一三日であるところ、本件訴訟が提起されたのが、それから三〇日以内である同年六月八日であることは、本件記録上明らかであるから、本件訴訟は、公選法二〇三条に基づく訴えとして適法というべきである。
三選挙権の平等と選挙制度
1 憲法一四条一項の規定は、地方公共団体の議会の議員の選挙に関する当該地方公共団体の住民の権利につき、これを行使する選挙人資格における差別を禁止するにとどまらず、その選挙権の内容の平等、すなわち各選挙人の投票価値の平等をも要求するものと解するのが相当である。
2 したがって、選挙区制をとる選挙にあっては、各選挙区間において、選挙人の投票価値に不平等が生じないように議員定数の配分の均衡を図るべきことは、憲法上の要請であるというべきである。
右憲法上の要請をふまえて、公選法一五条七項は、「各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準として、地域間の均衡を考慮して定めることができる。」と規定しているが、同条項の趣旨は、投票価値の平等という右憲法上の要請に徴すると、同項本文において、地方公共団体の議会が、定数配分規定を定めるに当たっては、選挙人数と配分議員数との比率の平等を最も重要かつ基本的な基準とすべきであるとの原則を明らかにするとともに、議員定数を人口に比例させることのみが唯一絶対の基準であるとまではいえず、それ以外にも、考慮すべき要素として、都道府県、市町村等の行政区画、地理的状況等の諸般の事情、人口の都市集中化現象等の社会情勢の変化があって、これらの要素を勘案すると、定数配分に当り、形式的に人口比例の原則のみを基準としたのでは、かえって不相当な場合があり、このような場合には、それぞれの選挙区の具体的な特殊事情を正当に考慮して、「おおむね人口を基準とし」つつも、地域間の実質的な均衡を図るために、人口比例の原則を、合理的な範囲において修正した定数配分をすることができるというべきであり、同項但し書は、この趣旨を明らかにしたものである。
3 また、都道府県議会の議員選挙の選挙区は、郡市の区域によるものとし(公選法一五条一項)、郡又は市の区域の人口が、議員一人当りの人口の半数に達しない場合には、条例で隣接する郡市と合わせて選挙区を設けなければならないが(強制合区規定、同条二項)、当該選挙区の人口が、議員一人当りの人口の半数以上ではあるが、なお議員一人当りの人口に達しない郡市については、独立した選挙区とするか、条例で隣接する他の郡市と合わせて一つの選挙区とするかは、当該都道府県議会の裁量に委ねられていること(任意合区規定、同条三項)、これら合区選挙区を設けるにあたっては、議会が、行政区画、衆議院議員の選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないとされていること(同条六項)、なお、強制合区の対象となる選挙区であっても、昭和四一年一月一日現在において設けられている選挙区については、当分の間、強制合区の規定にもかかわらず、条例で当該区域をそのまま選挙区(特例選挙区)とすることができる旨の例外規定(同法二七一条二項)があることは、被告主張のとおりであり、これらの規定は、その限りにおいて、人口比例の原則を修正し、緩和するものであることを否定することができない。
4 このように、選挙区割りと議員定数配分の具体的決定には、人口比例原則を修正すべき種々の政策的、技術的考慮要素があるが、どのような事情が存するときに右の修正を加えるべきか、また、これらの非人口的要素をどのように考慮して具体的決定に反映させるべきか、についての客観的基準が存在するものともいえないから、定数配分規定が公選法一五条七項に適合するか否かは、結局のところ、地方公共団体の議会が具体的に定めたところが、その裁量権の合理的行使として是認されるか否かによって決するほかはない。
そして、前記のとおり、選挙人がその行使する投票価値においても、平等に取り扱われるべきであるとの憲法一四条一項の要請を受けて、公選法一五条七項は、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例の原則を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙区の選挙人の投票価値が平等であることを強く要求しているものと解される。
したがって、定数配分規定の制定又はその改正により、具体的に決定された選挙区割りと定数配分の下における選挙人の投票価値に不平等が存し、あるいは、その後の人口の異動により、右不平等が生じ、それが地方公共団体の議会において、地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌しても、なお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、もはや、地方公共団体の議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、右定数配分規定は、公選法一五条七項に違反していると判断されざるを得ないものというべきである。
もっとも、制定又は改正の当時、適法であった定数配分規定の下における選挙区間の議員一人当りの選挙人数又は人口(この両者はおおむね比例するとみてよい。)の較差が、その後の人口の異動によって拡大し、公選法一五条七項に定められた選挙権の平等の要求に反する程度に至った場合には、そのことによって、直ちに当該定数配分規定が同項に違反するとするのは相当ではなく、人口の異動の状態をも考慮して、同項の要求する合理的期間内における是正が行われないときに、初めて当該定数配分規定が同項の規定に違反するものというべきである。
四本件定数条例の違法性
そこで、本件選挙条例の制定及び改正の経過並びに昭和六二年四月一二日に施行された本件選挙当時における定数配分の状況について判断する。
1 (1)本件定数条例の改正経過が、請求原因に対する被告の主張(第二の三の2の(三))のとおりであること、(2)昭和四六年選挙時(同四〇年国勢調査人口による)における対飾磨郡最大較差は2.82倍、較差二倍以上の選挙区一八、較差三倍以上の選挙区及び逆転現象はないこと、(3)昭和五〇年選挙時における対飾磨郡最大較差は3.95倍、較差三倍以上の選挙区二、特例選挙区とされた飾磨郡選挙区を除いた場合の対佐用郡最大較差は3.57倍、較差二倍以上の選挙区一九、較差三倍以上の選挙区一、(4)昭和五四年四月八日施行の選挙時における選挙区、基準とすべき昭和五〇年国勢調査人口、配分議員定数、議員一人当りの人口、議員一人当りの人口についての飾磨郡選挙区を一とした各選挙区の較差は、別表一記載のとおりであって、対飾磨郡最大較差3.65倍、較差二倍以上二三選挙区、較差三倍以上六選挙区、逆転現象一二通り、特例選挙区とされた佐用郡、飾磨郡各選挙区を除いて、対城崎郡(日高町を除く。)最大較差3.30倍、較差二倍以上一八選挙区、較差三倍以上二選挙区であること、(5)昭和五八年四月一〇日施行の選挙時における選挙区、基準とすべき昭和五五年国勢調査人口、配分議員定数、議員一人当りの人口、議員一人当りの人口についての佐用郡選挙区を一とした各選挙区の較差は、西区及び垂水区の人口、右両区の各選挙区の議員一人当りの人口、議員一人当りの人口についての対佐用郡選挙区較差を除いて、別表二記載のとおりであって、対佐用郡最大較差3.69倍、較差三倍以上八選挙区、逆転現象二一通りであること、(6)昭和六二年四月一二日施行の本件選挙時における選挙区、基準とすべき昭和六〇年国勢調査人口、配分議員定数、議員一人当りの人口についての佐用郡選挙区を一とした各選挙区の較差は、別表三記載のとおりであること、佐用郡及び城崎郡の昭和三五年以降の人口の推移が別表「人口増減表」に記載のとおりであること、はいずれも当事者間に争いがない。
2 右争いのない事実に、<証拠>を総合すると次のとおり認められる。
(一) 昭和四一年一二月二八日に、それまで施行されていた「兵庫県議会議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例」(昭和三七年兵庫県条例第五二号)が廃止されたのに伴い、本件定数条例が新たに制定された。
本件定数条例は、その後、昭和四九年に至るまで改正されなかったが、昭和四六年施行の際には、選挙区間における議員一人当りの人口の較差は、最大一対2.82(以下、較差に関する数値は、すべて概算である。)にとどまるものであり、また、右選挙当時、人口の多い選挙区の定数が、人口の少ない選挙区の定数より少なくなっているという、いわゆる逆転現象もみられなかった。なお、右昭和四六年施行の選挙時における基準とすべき人口については、「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(昭和四五年法律第一二八号)」及び同法施行令(昭和四五年政令第三四一号)によって、昭和四〇年国勢調査人口によるものとされていた。
(二) 昭和四九年における本件定数条例の改正点は、被告主張のとおりであるが、その後、昭和五〇年に行われた選挙における、昭和四五年の国勢調査の結果による人口(神戸市北区選挙区及び神戸市兵庫区選挙区の人口については、昭和四八年八月一日に北区が兵庫区から分離されたのに伴い、被告主張のとおり、北区一〇万六一〇一人兵庫区一六万三三四一人)に基づく右選挙当時の選挙区間における議員一人当り人口の較差は、飾磨郡選挙区に対し、最大一対3.95を示し、特例選挙区である飾磨郡選挙区を除いたその余の選挙区についてみても、その較差の最大は、一対3.57を示していた。また、飾磨郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、二選挙区であり、右飾磨郡選挙区を除いた選挙区のうちで、佐用郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区も一選挙区あった。さらに、いわゆる逆転現象も、一部の選挙区間で三通りみられた。
(三) 昭和五三年の本件定数条例の改正点は、被告主張のとおりであり、その後、昭和五四年に施行された選挙における、昭和五〇年の国勢調査の結果による人口に基づく右選挙当時の選挙区間における議員一人当り人口の較差は、飾磨郡選挙区と加古川市選挙区との間において、最大一対3.65を示し、特例選挙区である佐用郡及び飾磨郡選挙区を除いたその余の選挙区間についてみても、その較差の最大は、城崎郡(日高町を除く。)選挙区と、加古川市選挙区との間において、一対3.30を示していた。また、飾磨郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、六選挙区であり、佐用郡及び飾磨郡各選挙区を除いた場合の、城崎郡(日高町を除く。)選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、二選挙区であり、さらに、いわゆる逆転現象も一部の選挙区間で一二通りみられた。
(四) 昭和五五年及び同五七年の本件定数条例の各改正点は、被告主張のとおりである。その後、昭和五八年に施行された選挙における、昭和五五年の国勢調査の結果による人口に基づく右選挙当時の選挙区間における議員一人当り人口の較差は、佐用郡選挙区と宝塚市選挙区との間において、最大一対3.69を示し、特例選挙区である飾磨郡、佐用郡及び城崎郡(日高町を除く。)各選挙区を除いたその余の選挙区間についてみても、その較差の最大の美方郡選挙区と宝塚市選挙区との間において、一対2.80を示していた。また、佐用郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、八選挙区であり、さらに、右選挙当時、いわゆる逆転現象も、一部の選挙区間で二一通りみられた。
(五) 右昭和五八年施行と選挙ののち本件選挙までの間には、本件定数条例について、改正はされなかったが、昭和六〇年の国勢調査の結果、特例選挙区とされているのは、佐用郡及び城崎郡(日高町を除く。)の両選挙区のみとなった。そして、本件選挙当時において、各選挙区の議員定数と人口は、別表三に記載のとおりであって、右国勢調査の結果による人口に基づく選挙区間における議員一人当り人口の較差は、佐用郡選挙区と神戸市西区選挙区との間の一対4.52を最大に、城崎郡(日高町を除く。)選挙区と神戸市西区選挙区との間の右較差も一対4.17に達し、特例選挙区である佐用郡、城崎郡(日高町を除く。)両選挙区を除外したその余の選挙区間についてみても、その較差の最大は、飾磨郡選挙区と神戸市西区選挙区との間において、一対3.81に達する外、美方郡選挙区と神戸市西区選挙区との間における較差は一対3.50に達しているし、佐用郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、四六選挙区中一一選挙区に達している外、特例選挙区を除く選挙区のうちで、飾磨郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、七選挙区であり、美方郡選挙区に対する較差三倍以上の選挙区は、二選挙区である。また、いわゆる逆転現象も、津名郡選挙区(人口六万六七九一人、定数二)と神戸市西区選挙区(人口一一万〇七七四人、定数一)との間にみられるような顕著な例を始めとして、四六選挙区中一二選挙区において、次のとおり、二七通りも存在する。すなわち、二人区対三人区は、「宝塚市対兵庫区、灘区、長田区、東灘区」、「伊丹市対兵庫区、灘区、長田区」、「須磨区対兵庫区、灘区、長田区」、「北区対兵庫区、灘区、長田区」、「川西市・川辺郡対兵庫区、灘区、長田区」の各選挙区であり、一人区対二人区は、「西区対津名郡、氷上郡」、「高砂市対津名郡、氷上郡」、「芦屋市対津名郡、氷上郡」、「三木市・美嚢郡対津名郡、氷上郡」、「揖保郡対津名郡」、「赤穂市・赤穂郡対津名郡」、「神崎郡対津名郡」の各選挙区であって、以上二七通りである。ちなみに、右逆転現象を生じている津名郡選挙区と神戸市西区選挙区との間の議員一人当りの人口較差は、一対3.31に達することが計数上明らかである。
以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
3 右認定の事実からすれば、本件選挙当時において選挙区間に存した右のような議員一人当り人口の較差及び逆転現象が示す選挙区間における投票価値の不平等は、本件定数条例制定後の人口の変動の結果によってもたらされたものにほかならないと認められるが、前記説示のとおり、選挙区の人口と配分された議員定数との比率の平等が、最も重要かつ基本的な基準とされる地方公共団体の議会の議員の選挙の制度において、右較差が示す選挙区間における投票価値の不平等は、地方公共団体の議会において、地域間の均衡を図るため通常考慮することができる諸般の要素を斟酌しても、なお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたというべきであり、これを正当化する特別の理由がない限り、選挙区間における本件選挙当時の右投票価値の較差は、公選法一五条七項に規定する選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたものというべきである。
被告は、前記地方公共団体の議会議員の選挙区割り及び定数配分に関する公選法の規定からすると、議員一人当りの人口の半数を僅かに上回る人口の郡、市の地域を独立の一選挙区として、これに議員一人の定数配分をすることができ、議員一人当りの人口の1.5倍以上二倍未満の人口の郡、市の区域であっても、議員総定数との関係で、定数が一人しか配分されない選挙区が生じうることとなり、その結果、これらの選挙区間では、議員一人当りの人口に一対三以上の較差が生じうるとし、その上に、同法一五条七項但し書の規定を適用したり、同法二七一条二項の規定を適用するときは、それ以上の較差を生じうることも、当然予想され、このような公選法の規定の仕方からして、法は、相当程度の較差の存在を許容しているものといわざるを得ないと主張する。
しかしながら、このような配分結果は、右公選法の各規定があるからといって当然に許容されるものとはいえず、同法一五条三項(任意合区規定)の適用、選挙区全体の定数配分の見直しなどにより、このような配分結果を避ける余地がないか否かを見極めることによって、それが、投票価値の平等、人口比例の原則を基本原理とする同条七項に違反しているか否かを検討しなければならないのであって、被告の右主張は失当であり、採用することができない。
なお、被告は、佐用郡選挙区と城崎郡(日高町を除く。)選挙区とについて、右両選挙区は、過疎化が進み、行政需要が山積していること、その他種々の事情をあげて、右両選挙区を公選法二七一条二項の特例選挙区としたことについて合理性があると主張する。しかし、公選法二七一条二項は、憲法一四条、公選法一五条七項によって要請されている選挙人の投票価値の平等の原則に対する例外規定であるから、その解釈は厳格になされるべきであって、安易に右同条項による特例区を設けることは、相当でないというべきである。したがって、右同条項による特例区を設けるについては、当該選挙区が遠く離れた離島であるとか、峻険な山獄に囲まれて交通が著しく不便であるというような地理的に極めて特殊な状況にあるため、隣接の選挙区に合区することが著しく困難であるなどの特別の事情の存することが必要であると解すべきところ、本件において、被告主張の諸事情からは、佐用郡選挙区と城崎郡(日高町を除く。)選挙区を、公選法二七一条二項の特例区としなければならない特別の事情があるとは認め難い。却って、前述の当事者間に争いのない事実と弁論の全趣旨によれば、佐用郡選挙区も城崎郡(日高町を除く。)選挙区も、隣接の選挙区に陸地続きで接しており、自動車による交通の発達した現在においては、隣接の選挙区に往来することについて格別の障害がないこと、しかも、佐用郡選挙区及び城崎郡(日高町を除く。)選挙区は、別表「人口増減表」に記載のとおり、昭和二五年以降一貫して徐々に人口が減少してきており、佐用郡選挙区については、昭和五〇年の国勢調査結果が判明したときから、また城崎郡(日高町を除く。)選挙区については、昭和五五年の国勢調査結果が判明したときから、いずれも兵庫県の人口をその議員の定数で除して得た数の半数に達しない強制合区対象選挙区(公選法一五条二項)となっていたのであるから(この点は被告の認めるところである)、それから本件選挙のときまでには、右両選挙区を隣接の選挙区に合区するなどして、不平等な議員定数の配分を是正するに必要な期間があったことが認められる。したがって、本件選挙において、佐用郡選挙区と城崎郡(日高町を除く。)選挙区を公選法二七一条二項による特例区としたことは合理性がなく、相当でないといわなければならない。
また、被告は、議員の定数条例を改定するには相当の期間が必要であるところ、本件選挙については、定数配分の基準とすべき昭和六〇年の国勢調査結果による人口が告示されたのが昭和六一年七月二一日であり、それから本件選挙の期日である昭和六二年四月一二日までの期間が極めて短かった旨の主張をしている。しかしながら、右昭和六一年七月二一日から同六二年四月一二日までの間には八か月以上の期間があるばかりでなく、被告の主張によれば、兵庫県議会は、本件選挙における定数配分規定を検討すべく、昭和六一年六月五日に、議会内に、「議員定数等調査特別委員会」を設置し、委員会内に設けられた小委員会を中心に、定数配分の協議、検討を行ったというのであるから、本件選挙における前記投票価値の不平等を是正するために、議員定数の配分を改めるに必要な期間は、充分にあったものといわざるを得ない。したがって、被告の右主張は採用できない。
その他、本件において、前記特別の事情を見いだすことはできない
4 そして、前記認定の事実からすれば、本件定数条例の下における選挙区間の投票価値の較差は、遅くとも昭和五〇年に行われた国勢調査の結果が判明した時点において、既に、公選法一五条七項に規定する選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたものというべく、右較差が将来さらに拡大するであろうことは、弁論の全趣旨により明らかな兵庫県における各地域の人口変動の経緯に照らして、容易に推測することができたにもかかわらず、兵庫県議会は、本件選挙までの間に、右条例を部分的に改正しただけで、右較差を放置し、同項の規定上要求される合理的期間内における是正をしなかったものというべく、したがって、本件定数条例は、本件選挙当時、同項の規定に違反するものであったと断定せざるを得ない。
また、定数配分規定は、その性質上、不可分一体であると解するのが相当であり、同項に違反する不平等を生ぜしめている部分のみならず、全体として違法の瑕疵を帯びるものと解すべきである(前掲各大法廷判決参照)。
五本件選挙の効力
以上のとおり、本件定数条例は、本件選挙当時、全体として違法であって、右条例に基づいて施行された本件選挙も違法であるといわなければならないが、その効力については、更に考慮を必要とする。
およそ公選法二〇三条の訴訟において、請求認容の判決がされたときは、当該選挙は無効となり、直ちに法定期間内の再選挙が施行されて違法状態が是正されることになるのであるが、議員定数配分規定の違法を理由とする同条の規定に基づく訴訟においては、当該選挙を無効とする判決をしても、直ちに再選挙施行の運びとなるわけではなく、公選法に適合する選挙を施行して違法状態を是正するためには、議員定数配分規定の改正という別途の条例制定手続きを必要とする。
その意味において、このような訴訟の判決については、一般の公選法二〇三条の訴訟のそれとは別個の考慮を必要とするものというべきであり、このような見地から、たとえ、当該訴訟において、議員定数配分規定が違法と判断される場合においても、これに基づく選挙を常に無効とすべきものではないと解するのが相当である。
すなわち、違法な議員定数配分規定によって、選挙人の基本的権利である選挙権の行使が制約されているという不利益など、当該選挙の効力を否定しないことによる弊害と、右選挙を無効とする判決の結果、議員定数配分規定の改正が、当該選挙区から選出された議員が存在しない状態で行われざるを得ないことなど、一時的にせよ憲法の予定しない状態が現出することによってもたらされる不都合、その他諸般の事情を総合して考慮することにより、いわゆる事情判決の制度(行政事件訴訟法三一条一項)の基礎に存すると解すべき一般的な法の基本原則を適用して、選挙を無効とする結果、余儀なくされる不都合を回避することもできると解すべきである(前掲最高裁判所昭和五一年四月一四日及び同六〇年七月一七日の各大法廷判決参照)。
右のような見地に立って本件をみると、選挙区間における議員一人当りの人口の較差の推移は、前記説示のとおりであり、右較差が漸時拡大の傾向をたどっていたことは、それまでの人口の推移等から十分予測可能なことであって、決して予期し難い特殊事情に基づく結果とはいえないことは否定できないが、他方、本件選挙当時の選挙区間における議員一人当り人口の較差の程度等本件における諸般の事情を併せ考えると、本件は、前記一般的な法の基本原則に従い、本件選挙が、公選法一五条七項に違反する本件定数条例に基づいて行われた点において違法である旨を判示し、主文において本件選挙の違法を宣言するにとどめ、右選挙は無効としないこととするのが相当である場合に当たるものというべきである。
原告らは、憲法、公選法の精神に則り、いわゆる「期限付無効判決」あるいは「将来効判決」をすることを求め、また、これらの判決をすることにより、裁判所が、議会に対して時間的猶予を与えたのに、議会が本件定数条例の改正をしないときには、裁判所が作成した定数配分表に基づいて再選挙をすべく、そのために、裁判所は、主文において選挙の無効を判示するのみならず、申立により、当事者から示された配分規定に基づき、適法な配分規定を判示する権限と責任とがあると主張するが、公選法に基づかないこのような裁判をすることは、裁判所に与えられた権限を超え、地方公共団体の議会の権限を侵すものであって、許されないと解するのが相当であるから、右主張は失当であり、採用することができない。
六本件決定取消請求
本件決定取消請求は、公選法二〇三条二項が、地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は、都道府県選挙管理委員会の決定又は裁決に対してのみ提起することができる旨を規定しているために、提起されたものであって、原告らの本訴の目的が本件選挙を無効とすることになり、本件決定取消請求は、これに付随するものとして求められているにすぎないことが明らかであるから、選挙無効の請求について前述のような判断に達した以上、本件決定自体に仮に瑕疵があったとしても、これを取り消す利益ないし必要はないというべきであり、本件各決定取消請求も棄却すべきである。
七結論
よって、原告らの本訴各請求を棄却し、本件選挙のうち別紙選挙区目録記載の各選挙区における選挙が違法であることを宣言することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九二条但し書に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官後藤勇 裁判官東條敬 裁判官横山秀憲)
別紙選挙区目録
1 神戸市西区選挙区
2 神戸市須磨区選挙区
3 神戸市北区選挙区
4 宝塚市選挙区
5 高砂市選挙区
6 伊丹市選挙区
別紙当事者目録<省略>
別紙訴訟代理人目録<省略>
別紙訴訟復代理人目録<省略>
別表一
昭和五四年四月八日実施選挙
現行選挙区
50年
国勢調査
現行
定数
議員一人当たり人口
飾磨郡を1とした較差
1
東灘区
183,872
3
61,291
2.44
2
灘区
157,891
3
52,630
2.09
3
葺合区
73,415
2
36,708
1.46
生田区
57,076
1
57,076
2.27
4
兵庫区
165,868
3
55,289
2.20
5
北区
135,691
2
67,846
2.70
6
長田区
185,974
4
49,494
1.85
7
須磨区
125,550
2
62,775
2.50
8
垂水区
275,268
4
68,817
2.74
9
姫路市
436,086
8
54,511
2.17
10
尼崎市
545,783
10
54,578
2.17
11
明石市
234,905
3
78,302
3.12
12
西宮市
400,622
7
57,232
2.28
13
洲本市
44,137
1
44,137
1.76
14
芦屋市
76,211
1
87,127
3.03
15
伊丹市
171,978
2
85,989
3.42
16
相生市
42,008
1
42,008
1.67
17
豊岡市
46,210
1
46,210
1.84
18
加古川市
183,280
2
91,640
3.65
19
竜野市
39,646
1
39,646
1.58
20
赤穂市・赤穂郡
67,031
1
67,031
2.67
21
西脇市
38,108
1
38,108
1.52
22
宝塚市
162,624
2
81,312
3.24
23
三木市・美嚢郡
63,746
1
63,746
2.54
24
高砂市
77,080
1
77,080
3.07
25
川西市・川辺郡
123,713
2
61,857
2.46
26
小野市
40,576
1
40,576
1.62
27
三田市
35,261
1
35,261
1.40
28
加西市
50,161
1
50,161
2.00
29
加東郡
32,410
1
32,410
1.29
30
多可郡
34,326
1
34,326
1.37
31
加古郡
43,436
1
43,436
1.73
32
飾磨郡
25,122
1
25,122
1.00
33
神埼郡
60,522
1
60,522
2.41
34
揖保郡
63,468
1
63,468
2.53
35
佐用郡
25,600
1
25,600
1.02
36
宍粟郡
53,456
1
53,456
2.13
37
城崎郡
27,739
1
27,739
1.10
38
出石郡・日高町
37,342
1
37,342
1.49
39
美方郡
33,843
1
33,843
1.35
40
養父郡
34,919
1
34,919
1.39
41
朝来郡
37,763
1
37,763
1.50
42
永上郡
72,401
2
36,201
1.44
43
多紀郡
42,026
1
42,026
1.67
44
津名郡
70,183
2
35,092
1.40
45
三原郡
57,813
1
57,813
2.30
別表二
昭和五八年四月一〇日実施選挙
現行選挙区
55年
国勢調査
現行
定数
議員一人当たり人口
佐用郡を1とした較差
1
東灘区
183,284
3
61,095
2.46
2
灘区
142,313
3
47,438
1.91
3
中央区
115,329
2
57,665
2.32
4
兵庫区
142,418
3
47,473
1.91
5
北区
164,714
2
82,357
3.31
6
長田区
163,949
3
54,650
2.20
7
須磨区
155,683
2
77,842
3.13
8
垂水区
212,758
3
70,919
2.85
9
西区
86,942
1
86,942
3.50
10
姫路市
446,256
8
55,782
2.24
11
尼崎市
523,650
10
52,365
2.11
12
明石市
254,869
4
63,717
2.56
13
西宮市
410,329
7
58,618
2.36
14
洲本市
44,131
1
44,131
1.77
15
芦屋市
81,745
1
81,745
3.29
16
伊丹市
178,228
2
89,114
3.58
17
相生市
41,498
1
41,498
1.67
18
豊岡市
47,458
1
47,458
1.91
19
加古川市
212,233
3
70,744
2.84
20
竜野市
40,941
1
40,941
1.65
21
赤穂市・赤穂郡
69,434
1
69,434
2.79
22
西脇市
38,303
1
38,303
1.54
23
宝塚市
183,628
2
91,814
3.69
24
三木市・美嚢郡
78,297
1
78,297
3.15
25
高砂市
85,463
1
85,463
3.44
26
川西市・川辺郡
141,360
2
70,680
2.84
27
小野市
43,574
1
43,574
1.75
28
三田市
36,529
1
36,529
1.47
29
加西市
51,051
1
51,051
2.05
30
加東郡
34,275
1
34,275
1.38
31
多可郡
34,172
1
34,172
1.37
32
加古郡
54,136
1
54,136
2.18
33
飾磨郡
26,889
1
26,889
1.08
34
神埼郡
64,466
1
64,466
2.59
35
揖保郡
66,912
1
66,912
2.69
36
佐用郡
24,874
1
24,874
1.00
37
宍粟郡
54,018
1
54,018
2.17
38
城崎郡
27,232
1
27,232
1.09
39
出石郡・日高町
37,278
1
37,278
1.50
40
美方郡
32,688
1
32,688
1.31
41
養父郡
33,979
1
33,979
1.37
42
朝来郡
36,850
1
36,850
1.48
43
氷上郡
72,982
2
36,491
1.47
44
多紀郡
41,685
1
41,685
1.68
45
津名郡
68,345
2
34,173
1.37
46
三原郡
57,744
1
57,744
2.32
別表三
本件選挙
現行選挙区
60年
国勢調査
現行
定数
議員1人当たり人口
佐用郡を1とした較差
1
東灘区
184,734
3
61,578
2.51
2
灘区
133,745
3
44,582
1.82
3
中央区
119,163
2
59,582
2.43
4
兵庫区
130,429
3
43,476
1.77
5
北区
177,221
2
88,611
3.61
6
長田区
148,590
3
49,530
2.02
7
須磨区
181,966
2
90,983
3.71
8
垂水区
224,212
3
74,737
3.05
9
西区
110,774
1
110,774
4.52
10
姫路市
452,917
8
56,615
2.31
11
尼崎市
509,115
10
50,912
2.08
12
明石市
263,363
4
65,341
2.69
13
西宮市
421,267
7
60,181
2.45
14
洲本市
44,563
1
44,563
1.82
15
芦屋市
87,127
1
87,127
3.55
16
伊丹市
182,731
2
91,366
3.73
17
相生市
39,868
1
39,868
1.63
18
豊岡市
47,712
1
47,712
1.95
19
加古川市
227,311
3
75,770
3.09
20
竜野市
41,157
1
41,157
1.68
21
赤穂市・赤穂郡
71,274
1
71,274
2.91
22
西脇市
38,770
1
38,770
1.58
23
宝塚市
194,273
2
97,137
3.96
24
三木市・美嚢郡
82,636
1
82,636
3.37
25
高砂市
91,434
1
91,434
3.73
26
川西市・川辺郡
150,806
2
75,403
3.08
27
小野市
45,686
1
45,686
1.86
28
三田市
40,716
1
40,716
1.66
29
加西市
52,107
1
52,107
2.13
30
加東郡
36,401
1
36,401
1.48
31
多可郡
34,298
1
34,298
1.40
32
加古郡
59,336
1
59,336
2.42
33
飾磨郡
29,020
1
29,020
1.18
34
神埼郡
67,637
1
67,637
2.76
35
揖保郡
71,440
1
71,440
2.91
36
佐用郡
24,516
1
24,516
1.00
37
宍粟郡
53,914
1
53,914
2.20
38
城崎郡
26,596
1
26,596
1.08
39
出石郡・日高町
37,110
1
37,110
1.51
40
美方郡
31,643
1
31,643
1.29
41
養父郡
33,595
1
33,595
1.37
42
朝来郡
37,149
1
37,149
1.52
43
氷上郡
74,103
2
37,052
1.51
44
多紀郡
41,144
1
41,144
1.68
45
津名郡
66,791
2
33,396
1.36
46
三原郡
57,690
1
57,690
2.35
別表①
60年国勢調査に基づく定数是正の例
……合区3であれば、総定数98で2倍以内
選挙区
昭和60年国勢調査人口
現行条例の定数
98名での配当基数
98名での是正案
議員1人当て人口
対養父郡較差
県総計
5,278,050
91
98
98
53,857
東灘区
184,734
3
3.430
3
61,578
1.832
灘区
133,745
3
2.483
2
66,872
1.990
兵庫区
130,429
3
2.421
2
65,214
1.941
長田区
148,590
3
2.758
3
49,530
1.474
須磨区
181,966
2
3.378
3
60,655
1.805
垂水区
224,212
3
4.163
4
56,053
1.668
北区
177,221
2
3.290
3
59,073
1.758
中央区
119,163
2
2.212
2
59,581
1.773
西区
110,774
1
2.056
2
55,387
1.648
姫路市
452,917
8
8.409
8
56,614
1.685
尼崎市
509,115
10
9.453
9
56,568
1.683
明石市
263,363
4
4.890
4
65,840
1.959
西宮市
421,267
7
7.821
7
60,181
1.791
洲本市
44,563
1
0.827
1
44,563
1.326
芦屋市
87,127
1
1.617
2
43,563
1.296
伊丹市
182,731
2
3.392
3
60,910
1.813
相生市
39,868
1
0.740
1
39,868
1.186
豊岡市
47,712
1
0.835
1
47,712
1.420
加古川市
227,311
3
4.220
4
56,827
1.691
竜野市
41,157
1
0.764
1
41,157
1.225
高砂市
91,434
1
1.697
2
45,717
1.360
赤穂市・赤穂郡
71,274
1
1.323
2
35,637
1.060
西脇市
38,770
1
0.719
1
38,770
1.154
宝塚市
194,273
3
3.607
3
64,757
1.927
三木市・美嚢郡
82,636
1
1.534
2
41,318
1.229
川西市・川辺郡
150,806
2
2.800
3
50,268
1.496
小野市
45,686
1
0.848
1
45,686
1.359
三田市
40,716
1
0.756
1
40,716
1.211
加西市
52,107
1
0.967
1
52,107
1.551
加東郡
36,401
1
0.675
1
36,401
1.083
多可郡
34,298
1
0.636
1
34,298
1.020
加古郡
59,336
1
1.101
1
59,336
1.766
飾磨郡・神崎郡
96,657
2
1.794
2
48,328
1.438
揖保郡・佐用郡
95,956
2
1.781
2
47,978
1.428
宍粟郡
53,914
1
1.001
1
53,914
1.604
城崎郡・美方郡
58,239
2
1.081
1
58,239
1.733
出石郡・日高町
37,110
1
0.689
1
37,110
1.104
養父郡
33,595
1
0.623
1
33,595
1.000
朝来郡
37,149
1
0.689
1
37,149
1.105
氷上郡
74,103
2
1.375
2
37,051
1.102
多紀郡
41,144
1
0.763
1
41,144
1.224
津名郡
66,791
2
1.240
1
66,791
1.988
三原郡
57,690
1
1.071
1
57,690
1.717
別表②
60年国勢調査に基づく定数是正の例
……総定数91でも合区7なら2倍以内
選挙区
昭和60年国勢調査人口
配当基数
配当基数整数値
整数値当て人口
91名での是正案
現行条例の定数
対相生市較差
県総計
5,278,050
91.000
91
58,000
91
91
東灘区
184,734
3.185
3
61,578
3
3
1.544
灘区
133,745
2.305
2
66,872
2
3
1.677
兵庫区
130,429
2.248
2
65,214
2
3
1.635
長田区
148,590
2.561
2
74,295
2
3
1.863
須磨区
181,966
3.137
3
60,655
3
2
1.521
垂水区
224,212
3.865
3
74,737
4
3
1.405
北区
177,221
3.055
3
59,073
3
2
1.481
中央区
119,163
2.054
2
59,581
2
2
1.494
西区
110,774
1.909
1
110,774
2
1
1.389
姫路市
452,917
7.808
7
64,702
7
8
1.622
尼崎市
509,115
8.777
8
63,639
8
10
1.596
明石市
263,363
4.540
4
65,840
4
4
1.651
西宮市
421,267
7.263
7
60,181
7
7
1.509
洲本市
44,563
0.768
1
44,563
1
1
1.117
芦屋市
87,127
1.502
1
87,127
2
1
1.092
伊丹市
182,731
3.150
3
60,910
3
2
1.527
相生市
39,868
0.687
1
39,868
1
1
1.000
豊岡・出石日高
84,822
1.462
1
84,822
2
2
1.063
加古川市
227,311
3.919
3
75,770
4
3
1.425
竜野市
41,157
0.709
1
41,157
1
1
1.032
高砂市
91,434
1.576
1
91,434
2
1
1.146
赤穂市・赤穂郡
71,274
1.228
1
71,274
1
1
1.787
西脇市・多可郡
73,068
1.259
1
73,068
1
2
1.832
宝塚市
194,273
3.349
3
64,757
3
3
1.624
三木市・美嚢郡
82,636
1.424
1
82,636
2
1
1.036
川西市・川辺郡
150,806
2.600
2
75,403
3
2
1.260
小野市・加東郡
82,087
1.415
1
82,087
2
2
1.029
三田市
40,716
0.702
1
40,716
1
1
1.021
加西市
52,107
0.898
1
52,107
1
1
1.306
加古郡
59,336
1.023
1
59,336
1
1
1.488
飾磨郡・神崎郡
96,657
1.666
1
96,657
2
2
1.212
揖保郡・佐用郡
95,956
1.654
1
95,956
2
2
1.203
宍粟郡
53,914
0.929
1
53,914
1
1
1.352
城崎郡・美方郡
58,239
1.004
1
58,239
1
2
1.460
養父郡・朝来郡
70,744
1.219
1
70,744
1
2
1.774
氷上郡
74,103
1.277
1
74,103
1
2
1.858
多紀郡
41,144
0.709
1
41,144
1
1
1.032
津名郡
66,791
1.151
1
66,791
1
2
1.675
三原郡
57,690
0.994
1
57,690
1
1
1.447
人口増減表
昭和 年
佐用郡 (人)
城崎郡 (人)
(昭和35年以降は日高町を除く)
25
38,352
55,196
30
35,664
54,653
35
32,455
31,326
40
28,921
30,047
45
26,410
28,198
50
25,600
27,739
55
24,874
27,232
60
24,516
26,596
別表③46年選挙時における定数較差
file_3.jpgny | roveme | renee bey AO ene | ee vs 3|s200| 219] 200 | teas] am asa] 2s | 209 we 2}eaas| sr] 335 San] tae afate| ta eae 26.65] 58 s|sosa) 20 | ae ae.ea| ca| |sasm) rave! C30 ata nie] a|s6.st] 2.103| 1.970 mi] cm a]enne) 260) 208 as] ts s|stou) rai] 10 So| os 1n]ssee] 2 1 e ar 05] 129| {saa} sam] ts irene) 1 Jaca] nen | esis 1 |r| zo | 26 1m] 24 2|tow) 20] 26 ast] 070) 1Jaas| tae | rae ama | won| 08 1 fees 9 | ee sie) | so.se| ars] 2} 2/r0.2| 26s] 2.00 | ses oes] 1] 1) >.08] 190] 1 a0| esa) tan] 1] fez] 2a] 220 man) om) 1] 4/an9) Las] 16 uniml res] 2] 2/aam| eor| aa wan) oms) 1) 1) een] 148) 170 | ses vse) 1) 1|e.s0] 2a) 24 seasons] 2] 1) suas] aes] aa zgolem| 1) s/n! saul sae mam) ees) i] 1}snoo) tae] tn ie meet cd Raw) oa) 1) a)seiey va] 130 wean) cast) 1] see] cae] ae vere it al 2 san eas] i] 1 os aanl osm] 1] 1! oo sie] tm] 1] | ve sem ows] fe) xen ove] ee Dm] ore] va Raul tase] 1 1h pres es 180 _3.00}
別表④
選挙区
昭和60年国勢調査人員
定数107名配当基数
定数
議員1人当り人口
較差
東灘区
184,734
3.745
4
46,124
1.41
灘区
133,745
2.711
3
44,582
1.36
中央区
119,163
2.415
2
59,582
1.82
兵庫区
130,429
2.644
3
43,476
1.33
北区
177,221
3.592
3
59,074
1.80
長田区
148,590
3.812
3
49,530
1.51
須磨区
181,966
3.688
3
60,655
1.85
垂水区
224,212
4.545
4
56,853
1.71
西区
110,774
2.245
2
55,387
1.69
尼崎市
509,115
10.321
10
50,912
1.55
西宮市
421,267
9.548
8
52,658
1.61
芦屋市
87,127
1.766
2
43,564
1.33
伊丹市
182,731
3.724
4
45,683
1.39
宝塚市
194,273
3.938
4
48,568
1.48
三田市
191,522
3.862
4
47,881
1.46
川西市・川辺郡
洲本市
102,253
2.072
2
51,127
1.56
三原郡
津名郡
66,791
1.354
2
33,396
1.82
明石市
263,363
5.339
5
52,673
1.61
加古川市
227,311
4.608
4
56,928
1.74
加古郡
69,336
1.202
1
59,336
1.81
高砂市
91,434
1.853
2
45,717
1.40
三木市・美嚢郡
82,636
1.675
2
41,318
1.26
小野市
82,087
1.664
2
41,044
1.25
加東郡
加西市
52,107
1.856
1
52,107
1.59
西脇市
73,068
1.481
2
36,534
1.12
多可郡
姫路市
452,917
9.181
9
50,324
1.54
竜野市
2,597
2.282
2
56,299
1.72
揖保郡
相生市
111,142
2.253
2
55,571
1.70
赤穂市・赤穂郡
飾磨郡
96,657
1.959
2
48,329
1.48
神崎郡
宍粟郡
78,430
1.590
2
39,215
1.20
佐用郡
豊岡市
65,497
1.327
2
32,749
1.00
出石郡
城崎郡
77,564
1.572
2
38,782
1.19
美方郡
養父郡
70,744
1.424
2
35,372
1.06
朝来郡
氷上郡
115,247
2.336
2
57,624
1.76
多紀郡
県総合
5,278,050
107.000
107
49,328
(端数を配当基数の整数値当りの人口の多い順に配分)